こんにちは、アクトパスNEWS編集局です。
日刊アクトパスNEWSでは今回から、温浴業界で働く方々へのインタビュー企画をスタートします。
温浴施設の経営者や支配人、現場スタッフはもちろん、商品やサービスで施設運営を支える企業の方々など、さまざまな立場の方にお話を伺います。普段、施設を利用するだけでは見えにくい運営の工夫や試行錯誤、商品開発の背景、温浴業界への思いを、現場の言葉でお伝えしていきます。
第一弾でお話を伺ったのは、ニシカワヤ株式会社です。
ニシカワヤは、1946年に化粧品や日用雑貨の卸売業として創業し、現在ではシャンプーや化粧品、サウナ用品、浴場備品など、温浴施設の運営に欠かせない商品を幅広く扱っています。単に既製品を納めるだけでなく、施設の困りごとや要望を聞き、数多くのオリジナル商品を生み出してきた会社でもあります。
今回は、営業部長の岡﨑龍一郎さんに、ニシカワヤの歴史、商品の誕生秘話、営業の現場で経験してきたこと、そして温浴業界のこれからまで、じっくりとお話を伺いました。全4回でお届けします。
第1回のテーマは、ニシカワヤが温浴業界と関わるようになった経緯と、1975年に生まれた「日本初とされるサウナマット(諸説あり)」の物語です。
サウナ室のベンチに敷かれた、黄色や白の大判マット。いまでは当たり前の存在ですが、その原型は、たった二枚のタオルを縫い合わせた「一人用の円形マット」だったそうです。

【アクトパス原田】
まず、ニシカワヤさんはどのように始まった会社なのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
創業は1946年です。現在の社長の祖父にあたる西川武雄が、名古屋で「西川武雄商店」を始めたのが最初です。当時は化粧品や日用雑貨の卸をしていました。
戦後ですから、まだ車もありません。商品をリヤカーに載せ、それを自転車で引きながら名古屋市内を回り、さまざまな得意先へ納めていたと聞いています。
【アクトパス原田】
そこから、どのように温浴業界と関わるようになったのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
当社が温浴施設と初めて関わったのは、1970年(昭和45年)です。最初のお客様は、名古屋市今池にあった「サウナスオミ」でした。
建物の1階には「レイト」というパチンコ店があり、当社はもともと、そのパチンコ店へ雑貨を納めていました。そのご縁から、2階以上にあったサウナスオミへ、化粧品や歯ブラシを納めるようになったのが始まりです。
【アクトパス原田】
当時の名古屋では、1階がパチンコ店で、上階がサウナという形が多かったのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
多かったそうです。翌1971年には、同じ今池に「サウナフジ」様が、1階をパチンコ店、上階をサウナとする形で開業し、当社のお客様になりました。
サウナフジ様は、日本で初めてオールナイト営業を行ったサウナとも聞いています。当時の名古屋には、同じように1階がパチンコ店、2階以上がサウナという施設が多くあったそうです。
【アクトパス原田】
そして1975年、サウナマットが生まれます。どのようなきっかけだったのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
「第二ワシントンホテル」が入っていた建物の低層部には複数の店舗が入っており、その2階に「サウナハワイ」があったそうです。そこの支配人から、二代目社長が相談を受けたことが始まりです。
当時のサウナ室には、一般的な長方形の絨毯が敷き詰められ、年に一度交換されていたそうです。しかし、使い続けるうちに汗の臭いが強く染みついてしまう。それが、大きな悩みでした。そこで、絨毯に代わるものとしてサウナマットをつくり、納めることになったのです。
【アクトパス原田】
既存の商品を探したのではなく、新しくつくったのですか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
そうです。二代目社長の母親が裁縫を得意としていたので、白いタオル生地を二枚重ね、円形に縫い合わせました。円の内側にも、ぐるぐるとミシンをかけ、座布団のような形にしたそうです。
それを一人用のマットとしてサウナ室へ置いたのが始まりです。当時の写真を見ると、本当に白くて丸いマットです。

【アクトパス原田】
それを、一枚ずつ手作業でつくっていたのですか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
はい。母親が一人で夜なべをして、タオルを円形に切り、ミシンで縫っていたと聞いています。大量生産はできませんから、注文が入るたびにつくって納める商品でした。
【アクトパス原田】
なぜ円形だったのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
会長にも確認しましたが、円形にした正確な理由は分かりませんでした。少なくとも、当時敷かれていた絨毯は一般的な長方形だったそうなので、絨毯の形に合わせたわけではなかったようです。
【アクトパス原田】
その円形マットが、どのように現在の長方形のサウナマットへ発展したのでしょうか。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
円形マットは、その後、名古屋市内の何店舗かへ納められました。それを見た地元のリネン会社の方が、「これはいい」と目を留めたそうです。
ただ、円形はタオルを丸く切るのも、周囲を縫うのも手間がかかります。そこで、バスタオルを二枚重ね、周囲を縁取る長方形に改良することで、大量生産できるようにした。それが、現在よく見かける大判のサウナマットへ発展していったと聞いています。

【アクトパス原田】
一人用の小さなマットから、ベンチに敷く大判のマットへ変わっていったのですね。
【ニシカワヤ岡﨑さん】
そうです。1980年代に健康ランドブームが起きると、大量のサウナマットが必要になりました。当時は、アロハシャツ柄の館内着「ムームー」やサウナマットを、ものすごい数納めていたそうです。
当社も、名古屋郊外にあった「中部健康センター七宝」へ商品を納めました。多い日には約3,000人が訪れるほど繁盛し、全国から施設関係者が見学に来ていたそうです。

そこで使われている商品を見た施設関係者が、「これはどこから仕入れているのか」と尋ね、当社を知ってくださり、取引につながっていく。インターネットがない時代ですから、繁盛施設そのものがショールームのような役割を果たしていたのだと思います。
* * *
汗の臭いが染みついたサウナ室の絨毯を、何とかしたい――。一軒のサウナから寄せられた相談に応えるため、二代目社長の母親が二枚のタオルを手に取り、夜なべをして円形に縫い上げました。
その小さな工夫は、リネン会社の目に留まり、大量生産できる形へと変わり、健康ランドブームとともに全国へ広がっていきました。
最初から大きな市場を見据えた商品開発ではありません。目の前のお客様の困りごとに耳を傾け、自分たちにできる方法で、まず形にする。そこに、現在まで続くニシカワヤの商品開発の原点がありました。
次回は、入社から34年、配達と現場経験を重ねてきた岡﨑さんの営業人生に迫ります。
(ハラダ)
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