温浴施設やサウナで使われる果物が浮かんだ木桶、赤い大型うちわ、および2色のロッカーキーが置かれています

こんにちは、アクトパスNEWS編集局です。

日刊アクトパスNEWSでは、温浴業界で働く方々へのインタビュー企画をお届けしています。第一弾では、温浴施設向けの業務用品を幅広く扱うニシカワヤ株式会社の営業部長・岡崎龍一郎さんにお話を伺っています。

第2回では、「化粧品なら軽そう」という思いから入社し、配達や施設のオープン支援を通じて現場を知っていった岡崎さんの34年間をご紹介しました。

第3回のテーマは、商品開発です。果物風呂の果物がつぶされる。ロウリュ用のうちわが一日で壊れる。ロッカーキーの色が施設の内装に合わない――。

ニシカワヤが生み出してきた商品の出発点には、いつも温浴施設の具体的な「困った」がありました。

【アクトパス原田】

浴槽に浮かべて使う「OKフロート」は、どのような困りごとから生まれたのでしょうか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

果物風呂を実施すると、浴槽に浮かべた果物を利用者の方が食べたり、握りつぶしたりしてしまうことがあり、施設側が困っていました。

最初は薬湯袋のような布袋に入れていましたが、それでは果物が見えず、香りも十分に出ません。みかんを入れるようなネットでは、浴槽の中で風情がありません。

そこで、木桶メーカーと相談し、桶に穴を開け、上部を透明なアクリル板で覆う形を考えました。果物には直接触れられませんが、中の果物は見えますし、木桶なので浴槽の景観にもなじみます。

【アクトパス原田】

現在の形には、すぐにたどり着いたのですか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

いいえ、10回ほどつくり直しています。

最初はアクリル板をフックで固定しましたが、うまく留まらず、取り外しにも手間がかかりました。木桶は水分を含むと伸縮するため、アクリル板が入らなくなったり、逆に緩くなったりもしました。

そこで支柱を立て、最終的にはネジで固定する現在の形に落ち着きました。施設にも試作品を使っていただき、「これは駄目だ」と言われるたびに直しました。

発売直後はほとんど売れませんでしたが、現在では年間約200個が売れる商品になっています。

【アクトパス原田】

大型うちわの「バタバタ」も、現場の声から生まれたのでしょうか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

そうです。もともとは竹と紙でできた祭り用の大型うちわを、ロウリュなどに使っていました。しかし、施設へ納めても一日で持ち手が割れてしまうことがあり、「何とかしてほしい」と相談されました。

最初は同じ形をプラスチック板でつくりましたが、サウナの熱で大きく反ってしまいました。ほかの素材を探していると、ホームセンターなどで養生材として売られている赤いプラスチック段ボールが見つかりました。それでつくってみると、熱にも強く、うまくはまったんです。

一時期はかなりの数を出荷し、現在も多くの施設で使われています。ただ、丈夫すぎて10年ほど使えてしまうので、買い替えが少ない。「もう少し壊れるようにつくればよかった」と、冗談で話しています(笑)。

【アクトパス原田】

ロッカーキーの「キー・オ・メイト」では、ニシカワヤさん独自の色をつくられています。こちらには、かなり印象的な出来事があったそうですね。

【ニシカワヤ岡崎さん】

ある施設のロッカーを選定していたとき、デザイン事務所の方へ、当時用意されていた青、黄、緑などの原色系のキー・オ・メイトを見せました。

その施設は、木目や黒、ゴールドを基調とした落ち着いた内装でした。そのため、「こんな色しかないのか。この施設には合わない」と、かなり強く叱られました。

私が「今はこの色しかありません」と軽く答えてしまったところ、「俺をなめているのか」「ないなら、お前たちがつくれ」というくらいの勢いで怒られました。あれほど本気で叱られたのは、小学生のとき以来ではないかと思います。

【アクトパス原田】

そこで、実際に新しい色をつくることにしたのですか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

あれほどの熱量で求める方がいるなら、ほかの施設にも同じニーズがあるかもしれないと思いました。

メーカーに相談すると、一色につき5,000個つくれば対応できると言われました。二色で500万~600万円ほどの投資です。売れるかどうか分からない商品でしたから、つくった直後は「全部残ったらどうしよう」と、本当に夜も眠れませんでした。

軌道に乗るまでは、お客様のところへ行くたびに「この色でお願いします」「売れないと私は会社に残れないので、お願いします」と、半ば強引に採用していただいたこともあります(笑)。

しかし、落ち着いた色を求めていた施設は、ほかにもありました。現在では多くの施設で採用され、今もニシカワヤからしか購入できないオリジナルカラーです。

【アクトパス原田】

寄せられた要望を商品化すべきかどうかは、どのように判断しているのでしょうか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

要望を伝える方の熱量は、一つの判断材料です。キー・オ・メイトも、あそこまで真剣に怒られなければ、商品になっていなかったと思います。

それほど困っている人がいるなら、同じことで困っている施設がほかにもあるのではないか。そこにニーズがあると考えます。

【アクトパス原田】

一方で、開発したものの、うまくいかなかった商品もありますか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

あります。森下仁丹と共同開発した、浴場で販売する健康食品「スルスラ」です。

当時、温浴施設では同種の商品がほぼ一社独占の状態でした。森下仁丹のブランド力があり、価格を合わせ、パッケージにもこだわれば勝負できると思いました。しかし、まったく相手になりませんでした。

競合商品は委託販売で、施設は売れた分だけ代金を支払えばよい仕組みでした。POPを各トイレに掲示するなど、売るための細かな支援も徹底されていました。一方、当社の商品は施設による買い取りでした。

商品そのものばかりを見て、施設にとっての仕入れやすさ、売りやすさまで考え切れていなかったのです。

【アクトパス原田】

成功した商品と、失敗した商品の違いは何でしょうか。

【ニシカワヤ岡崎さん】

売れるのは、お客様が実際に困っていることから生まれた商品です。

こちらの都合で「これなら売れるだろう」と考えてつくった商品は、お客様が求めているものと少しずつピントがずれてしまいます。商品の品質や見た目だけでなく、買いやすさや運用のしやすさまで含めて、お客様の困りごとに合っていなければ売れません。

施設の現場には、まだ解決できていない大変な作業がたくさんあります。その負担を少しでも軽減できる商品をつくることが、私たちの使命だと思っています。

* * *

果物を守る桶も、壊れないうちわも、施設になじむロッカーキーも、最初から立派な商品企画書があったわけではありません。

現場で誰かが発した「困った」「何とかしてほしい」という一言を受け止め、試し、失敗し、もう一度つくる。その繰り返しが、ニシカワヤにしかない商品を生み出してきました。

そして、商品をつくる側の思い込みではなく、使う側の困りごとに最後まで焦点を合わせること。それが、数々の成功と失敗を重ねてきた岡崎さんの商品開発哲学でした。

次回はいよいよ最終回です。備え付けのアメニティやサウナマットに求められるものは、どのように変わっているのか。現在の施設のこだわりと、岡崎さんが感じる商品づくりの面白さについて伺います。
(ハラダ)


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