18年前のセルフロウリュ(2004-NEWJAPAN SpaGrande)

 以前から「温浴ビジネスは装置産業ではない」「ハードからソフトの時代へ」「人は人によってしか癒されない」といったことをしつこく言い続けておりますが、今回は3つの側面から、もう人で勝負するしかない時代が来ているということを考えてみたいと思います。

◆人で勝負するしかない時代

(1)オフラインの価値

 先週末に、Facebookでつながっている高校一年の時の同級生とプチ同窓会をやりました。

週末に飲もうぜ!という話が盛り上がってきたので、どうせならたくさん集めようかと思ったのですが、なんでも東京都は今コロナ対策で会食の人数を4人までに制限しているそうで、始めに飲もうとしていたメンバーが大企業勤めで、そのルールに従わなければいけないと言い出し、結局4人だけの飲み会になりました。

しかし、久しぶりに懐かしい面々と話ができて楽しかったし、馬鹿話に腹筋がよじれるほど笑いながら、こういうリアルな楽しさを感じるのは久しぶりだな、と思いました。

この二年間、外出自粛にマスク着用、大人数での会食やアルコールが制限され、コミュニケーションの形態は一変しました。

リモートワークやオンラインコミュニケーションにもだいぶ慣れては来ましたが、やはり実際に会って話すのとは別物です。

オンラインが日常になったからこそ、リアルはより特別な価値を持つということ。

温浴施設は、人がそこに身を運ばなければ体験することができません。決してオンラインに置き換えることのできない究極のオフラインビジネスです。

貴重なリアル体験の場だからこそ、これまで以上に特別な時間、他に代え難い体験とならなければならないのです。

湯であれば、自宅にも小さいながらも浴槽はあるし、入浴剤やアロマを加えたり音楽をかけたり、工夫次第で楽しみも作り出せます。上質な天然温泉には及ばずとも、必ずしも温浴施設に行かなければ体験できないということではないのです。

しかし、自宅でサウナは簡単にできません。今サウナが注目され、集客好調なのは、そこに行かなければ体験できないものだから、とも言えそうです。

その特別な価値に磨きをかけるための方法を、より充実した設備、奇抜なアイデアやデザインに求めれば、投資がかさむ一方となります。

しかしハードではなく、コミュニケーション要素を充実させることで、リアルの価値を高めることができると考えています。例えばアウフグースの技やトークはまさにコミュニケーション要素。最低限のサウナ設備環境があれば価値あるリアル体験が提供できるのです。

(2)ハードによる生産性の限界

 昨年末の振り返りでも述べたように、建築工事費の高騰、物価の上昇という流れに対抗するために、温浴ビジネスはもっと生産性を高めていく必要に迫られています。

ハードをどう弄り回したところで、1人あたり占有面積や10分あたり入館料といった生産性のセオリーを打ち破るのは容易なことではありません。しかし「人」の力が加われば、そのセオリーは越えて行くことができるのです。

いまや伝説となった入館料2万円のサウナ、なんばニュージャパンのSpaGrandeは、1日客数50人、日商100万円を目指すビジネスモデルでした。年商にすると3.5億円ですが、店舗面積は約200坪でした。

もし今スーパー銭湯的な業態で年商3.5億円を目指すなら、面積は500坪以上、投資は7~10億円が必要となります。

SpaGrandeの坪あたり生産性は通常の温浴施設の2倍以上ということになりますが、それを実現させたのは明らかにハードの力ではなく、「人」だったのです。

(3)変われないリスク

 いま、次々と新しい小規模サウナ施設がオープンしています。個室サウナからアウトドアサウナまで、個性豊かな施設が生まれていますが、いつどこで新規オープンがあるのか、もはや情報が補足しきれなくなってきました。面白そうな施設はできるだけ見に行きたいとは思っているのですが、全部行くのはちょっと無理そうです。

1年前だったらサウナの新規オープンというだけで全国から注目を集めることができていたと思いますので、その変化のスピードは恐るべきものです。

このメルマガ第1570号で「商圏はいずれ縮小する」という記事を書いたのは2021年6月14日でした。その時は2、3年かけてそうなっていくだろうというイメージで書いていたのですが、実際にはわずか半年で状況が大きく変化しています。

商圏縮小だけでなく…

---------
この記事は会員限定公開となっており、全文は表示されておりません。

メールマガジン「日刊アクトパスNEWS」をご購読いただくと、毎日全文がメールで届きます。

メールマガジンご購読のご案内はコチラです。