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2016年1月26日創刊。

著者:株式会社アクトパス 代表取締役 望月 義尚

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発行:日刊(日曜祝祭日および夏季冬季休業期間は休刊いたします)

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著者プロフィール

望月義尚(もちづき よしひさ) 大手コンサルティング会社にて温浴事業の専門コンサルティングチームを創設。2006年に、より総合的な温浴事業プロデュースを目指して独立、株式会社アクトパス代表取締役に就任。これまで多くの温浴施設の開業やリニューアル、事業再生のプロデュースで実績をあげている。

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────過去バックナンバー抜粋────

【日刊アクトパスNEWS】第1539号「もったいない話」

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今日は 202158日です。

もったいない話
 これから温浴施設の開発に向けて動き出そうとしているプロジェクトがあり、立地診断と市場調査のお手伝いをしました。

温泉の掘削は既に完了しています。メタケイ酸と塩分濃度が高い弱アルカリ性温泉で、泉温は40度以上、湧出量100L/分以上。かなり恵まれた源泉と言えます。

建設予定地はまだ更地で、開業するまでには多くの検討プロセスと時間が必要になりますが、それまでずっと源泉に蓋をして眠らせておくのかと思うともったいない気がしてきました。

本格的に温浴施設を開発するには多くの資金と時間が必要となりますが、事業性を問わずに温泉を利用するだけならプレハブ小屋の簡易風呂、温泉スタンド、温泉宅配、足湯、飲泉所、温室栽培、養殖など様々な利用方法があります。

せっかく優良な泉質なのですから、それを知っていただくという意味でも、どのような形であれまずは温泉提供をスタートした方が効果的でしょう。

天然温泉には泉質だけでなく、湯量や温度も合わせた複合的な価値がありますが、熱量の部分を金額に換算するとどうなるのか考えてみました。

よく「家庭の風呂を沸かすのには1回あたり100円くらいのコストがかかる」と言われていますが、その計算は以下のようになっています。

1Lの水を1度昇温するのに必要な熱量は1kcal

常温水を15度としたら、42度のお風呂は27度昇温した状態ですから27kcal/L。浴槽200Lなら5,400kcalの熱量が必要。

ガス1立米あたり熱量10750kcal×熱効率80%で割ると、5,400kcalとは0.62立米。ガス単価150円を掛けると94円。

ガスの種類や給湯器の性能によっても数字は変わりますが、だいたいこんな計算ですので、「1回あたり100円くらい」と言われているのです。

水の量(L)×上昇させる温度÷(ガスの燃焼量(kcal)×給湯器の熱効率(%))×ガス単価(円)

という計算式です。風呂の蓋とか浴槽の断熱、設備の電気代とか言い出すとややこしいので単純化しています。

この計算式を上記の源泉に当てはめてみますと、100L/×25×10,750kcal×80%×150円=43.6/分ですから、毎日62,791円、年間にすると22,918,605円の都市ガス代に相当する熱量が、地面から湧くということになります。

単に熱量という側面だけを見てもこれだけの価値があるのですから、やはり開業までの間蓋をして放置しておくだけではもったいないのです。

考えてみれば、日本全国には27,696箇所(令和元年)の源泉数があり、うち10,777が現在利用されていない源泉です。源泉によって湯量や温度は様々ですが、日本中にもったいない話が実はたくさんあるのではないかと思います。

先日セブン?イレブンの環境に優しいコーナーのことを書きましたが、こういったことにもまだまだ顕在化しきれていない温浴ビジネスのポテンシャルが潜んでいるのです。

(望月)

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【日刊アクトパスNEWS】第1530号「温度調整とは商圏の調整」

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今日は 2021423日です。

温度調整とは商圏の調整
 蔵王温泉での打ち合わせの後に、この地域には珍しくサウナに力を入れている施設が昨年7月にできたと聞いて、帰り道に立ち寄ってみました。
https://kogenyu.com/

蔵王からは車で20分ちょっとの距離ですから日帰り商圏としては充分に競合する範囲にあります。

天下の名湯である蔵王温泉街と「温泉」で競争しても、差別化するのは至難の技でしょうから、サウナに注力する考え方は理解できます。

そう思いながら施設を訪れたのですが、想像をはるかに上回るサウナに絶句しました。

施設の外に予約制のサウナ小屋が設置されており、ちょうど予約のお客様を迎える準備中だったのですが、薪ストーブ、曲面のベンチ、エッセンシャルオイルを垂らしたセルフロウリュ用の水、インフィニティチェア、一人用水風呂各地に急増中のアウトドアサウナの中でもかなり充実した内容です。

浴室サウナはどうだろうかと入ってみると、温度は90度以上の高温設定で、そのままでも充分な体感があるところなのに、サウナストーブの脇にはバケットとラドルが置いてありセルフロウリュ可能。

ベンチは部屋全体の空気が対流するようスカスカの造りで、内部に間接照明。

マットはタオルマット+ビート板。

ドライのままでもしっかり加温発汗できたところでセルフロウリュをしてみれば、勢いよく蒸気が発生してさらに強烈な熱さになります。

這々の体でサウナ室を抜け出し、深い水風呂に入ってみれば、キンキンの12.5度がかけ流しでじゃんじゃんオーバーフロー。

外気浴のためだけの露天スペースにはADAMSのガーデンチェアが並んでいます。

要するに、とんでもなくヘビーユーザー仕様のサウナ環境だということです。

高源ゆは「アスリートのためのリカバリー温泉」という非常に尖ったコンセプトの施設なのですが、その中でもサウナのセッティングは尖りまくっています。

健康で身体頑健なアスリートのための仕様だからそうなったということもあろうかと思いますが、私が感じたのは商圏戦略との整合性です。

高源ゆのある山形県上山市蔵王坊平というところは、宮城県と山形県をつなぐ蔵王エコーラインという山道の途中にありますから、一般的に温浴施設にとっての日常リピート圏となる10分圏、20分圏にはほとんど人が住んでいません。必然的に30分圏以遠の超広域からの集客が必要となります。

サウナは80度台、水風呂は18度前後とするのが最も一般的なセッティングです。人によって好みは異なりますが、最も広く万人受けを狙うならそのくらいの温度設定が最大公約数ということです。

しかしヘビーユーザーになると要求は過激化し、より熱いサウナ、冷たい水風呂を求めるようになります。施設としてはマニア受けばかりを狙って過激な温度設定にしていくと、一般客や入門者にはハードルが高いサウナ環境になってしまうので、なかなかできません。

結果として、ヘビーユーザーはなかなか出会えない自分の好みのサウナ環境を求めて、あちこちを彷徨うことになるのです。好みに合うサウナのためなら30分や1時間の移動も厭わない人たちです。

仮に過激なセッティングを好むヘビーユーザーが1000人に5人、0.5%だったとします。

足元の商圏人口が1,000人なら5人しか支持してくれません。同様のセッティングをする競合店があれば2人しか来店してくれないかも知れません。

しかし、広域の商圏人口が10万人いたら、0.5%でも500人の対象者がいます。足元に人口が少ないのなら、広く万人受けを狙うよりも、500人の彷徨うヘビーユーザーに対応する方が正解ということになります。

サウナ温度設定はスイッチ操作ひとつで調整できますが、商圏人口と競合店の分布状況によって、正解は変わるのです。

(望月)


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【日刊アクトパスNEWS】第1506号「お墨付きは要らない」

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今日は 2021年3月26日です。

◆お墨付きは要らない
いま、海の近くにある場所で、温浴施設開業準備のお手伝いをしているのですが、井戸を掘削したところ、かなりの塩分が含まれていることがわかりました。

これはガイベン・ヘルツベルグの法則といって、海沿いの地下水は淡水層が海水層の上に浮いた形で安定するという現象で、海岸近くの物件ではちょっと深く掘ると井戸水に塩分が含まれているというのはよくあることなのです。

掘る前から予測されていたことなのですが、この井戸水の成分分析を温泉審議会に届け出れば、天然温泉のお墨付きがもらえるのではないか?という議論になりました。

水1kg中に溶存物質量が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物イオンのものは、塩化物泉と呼ばれます。その井戸水は溶存物質1,000mgを軽く超えていましたので、天然温泉に該当することは間違いありません。

しかし、「それはやめたほうがいいと思います」と率直にお伝えしました。

最大の理由は、入湯税です。

その地域には既存の天然温泉がないため、自治体は入湯税の条例を定めていません。しかし、天然温泉の認定を受けた温浴施設が営業するとなれば、入湯税の課税が議論されることになるでしょう。場合によっては大人1人150円の重税が課されることになり、事業計画を抜本的に見直さなければならなくなります。

「天然温泉」の看板による集客効果と、入湯税の負担と、どちらが大きいかということです。仮に年間10万人に課税されたら、年間1500万円の税負担となります。その減収分を取り戻すためには、ざっくり言うと年間1億円くらいの増収が必要です。

そこまでの威力が天然温泉の看板にあるのか?と考えると疑問なのです。

逆に、天然温泉と謳っていなくても、入浴してみたら明らかにしょっぱくて、よく温まるといった入浴効果が実感できるなら、利用者はその施設のファンになってくれるのではないでしょうか。

看板に「天然温泉」という文字が入っているかどうかが重要なのではありません。

現代のように掘削技術が発達していなかった昔は、温泉に稀少価値がありました。「天然温泉」とは、わざわざ温泉地まで出向かなければ体験することのできない、有り難いものだったのです。

しかし、大深度掘削によって日本中どこでも天然温泉が湧出するようになって、しかもその温泉が加水や濾過循環塩素入りで提供されることが普通となって、稀少価値も薄まってしまったのです。

温度か成分で一定基準を満たしていれば、温泉法による天然温泉のお墨付きがもらえるのですが、お墨付きがあるということと、入浴してその良さが実感できることは決してイコールではありません。

成分分析表の数値よりも、その温泉が持つ本来の良さを最大限発揮できるよう大切に提供しているか、お湯のみならず総合的な入浴環境の品質向上にどれだけ取り組んでいるかといったことの方が重要なのです。

天然温泉の看板に甘えて、利用者満足の追求を怠るくらいなら、お墨付きなど要らないのです。

2014年頃から、機会あるごとに「温泉の純化、サウナの進化」ということを申し上げてきました。
http://blog.aqutpas.com/2014/09/post-0ba4.html

「成熟した温泉の世界では、より純粋で本質的な価値に目が向けられるようになる。一方サウナはこれから飛躍的に進化する」という予測であり、そうなるべきという提言でもあったのですが、サウナはその通りに進化してきたと思います。

しかし、温泉の純化は思ったほど進んでいません。2019年に純温泉協会が設立されるなどの動きがあり、そろそろ来るか?と思っているのですが、サウナに比べると勢いが足りないようです。

考えてみれば、サウナにはお墨付きなんてものはありません。

温度や湿度に基準値があるわけでもありませんし、その作り方や運用方法も千差万別です。サウナを提供したり楽しんだりするのに、お上の認定や規制、サポートもほとんどありません。

しかしサウナを愛する人たちは、良いサウナ、自分にあったサウナを求めて遠くまで出かけてみたり、喧々諤々の議論をしてみたり、事業者も消費者も試行錯誤しながらマーケットを育んでいます。

そこに成分分析表もお墨付きも必要ないのです。

源泉を保有している施設は、一度「お墨付きをもらっているから、うちは正式な天然温泉」という固定観念を忘れて、その温泉が持つ本来の良さを最大限発揮できるよう大切に提供しているか?、お湯のみならず総合的な入浴環境の品質向上にどれだけ取り組んでいるか?を見直してみれば、まだやれることがたくさん見つかるはずです。

温泉とサウナ、どちらも大切な文化として、共に発展していかなければならないと思っています。

(望月)


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