「アクトパスクラブ」会員の皆様、
今日は 2023年8月30日です。
成長させられる時(2)
1962年、大型温浴施設の黎明期に誕生した有馬ヘルスセンターは、日本三大古泉・名泉・薬泉でことごとく名前が上がる「有馬温泉」というブランドと、時代の追い風に乗って、創業以来30年間に渡って順調な黒字経営が続きました。
しかし、徐々にヘルスセンター業態が時流に合わなくなってきたことと、バブル崩壊による景気の悪化から業績が低迷し、90年代から2000年初頭まで12年連続で赤字経営が続いてしまいました。
12年間の累損が積み上がり、老朽化した巨艦施設。それでも来館してくれるのはわずかな超常連客と、無料招待券を持った地元年配客ばかりで、館内ではほとんど消費がないという状態。現場はもう廃業するしかないだろうという雰囲気になっていました。
この時点で開業から42年経っていましたので、一般的な温浴施設の平均寿命から考えれば充分過ぎるほどの老舗。廃業することになっても驚くことはないでしょう。
有馬ヘルスセンターは株式会社有馬ビューホテルが経営していましたが、同社は神戸電鉄、さらには阪急グループに属しています。
グループ本社経営企画部の入谷さんという方から連絡があり、面談しました。
いかにも経営企画の切れ者担当者という雰囲気を漂わせた入谷さんからの最初のご相談は、「経営再建の可能性はあるのか、それとも廃業するしかないのか」でした。廃業すれば巨額の損失処理が発生しますので、事業を存続して経営再建できるに越したことはないのですが、その道筋を誰も見つけることができなかったのです。
既存施設の診断や市場調査を行い、私の出した答えは「再建可能」でした。
初めから答えありきではなく、しっかり調査診断した上で慎重に導いた結論ですので、再建可能とする根拠には自信があったのですが、それでも老朽化した赤字ヘルスセンターの再建の難易度が高いことは想像がつきました。
大変だったのはそこからです。今思い出しても動悸がして冷や汗が出てくるくらい、困難な仕事でした。事業再生そのものよりも…
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