小京都の湯 吐水口

有料メルマガ「日刊アクトパスNEWS」会員の皆様

今日は 2022年3月28日です。

水音を取り戻せ

 まん延防止等重点措置が全国的に解除され、感染者や重症者の数も緩やかに減少傾向、社会活動は徐々に平時の動きを取り戻しつつあります。

しかしSNSを見ていると、温浴施設でお喋りする人たちと同じ空間に居ることに強いストレスを感じる人がまだ多いようで、お怒りのツイートを度々見かけます。

マスク着用とオンラインコミュニケーションが普通になった時代だからこそ、温浴施設に行った時くらいは楽しくお喋りタイムという気持ちも分かります。人によって感じ方、考え方はそれぞれですので、単純にどちらが正しいとか間違っているとか言えるものでもなく、コロナ禍が解消するまでは軋轢が続くのでしょう。

コロナ以前からワイワイ飲んで騒ぐのが当たり前の居酒屋がある一方で、静かに食事を楽しむようなレストランがあるのと同じで、施設側の方針もそれぞれ違うと思います。

しかし、温浴施設としてはお喋りを嫌うお客さまの足が遠のいてしまうのは困りますし、かといって黙浴の強制は、本当はやりたくないと考えている施設も多いと思います。

何か良い対策はないものかと考えておりました。

先日、台所で食器を洗っている時に、少し離れたところから家族に話しかけられたのですが、何を言っているのか全く聞きとれません。「今は水を使ってるから聞こえないよ!」と言いながら思い出したのが水音のマスキング効果です。

連続的な水音には、周囲の騒音や雑音を覆い隠す効果があります。人の話し声と水音は周波数が近いのかも知れません。音がなくて静かな環境とは違いますが、何を言っているのか分からず、気にならないのです。

浴室には様々な水音があるのでこのマスキング効果が期待できたはずなのですが、それで気がついたのが公衆浴場法の改正です。

「浴槽からのオーバーフロー水を回収して循環利用してはならない。オーバーフロー水は排水すべし。」

これは、オーバーフロー回収槽の清掃が行き届かず、レジオネラ菌繁殖の温床となるリスクが高いからで、結果じゃんじゃん溢れるような贅沢なオーバーフローは影を潜めました。それができるのは高温で湯量豊富な源泉に恵まれ、しかも排水にコストがかからないという環境がある施設か、昔のオーバーフロー回収式の古い設備で現行法では不適格だが次の改修までは黙認されている、という施設です。

「循環濾過して浴槽に戻ってくる湯は、水面よりも上にある吐水口から戻してはならない。循環した湯は浴槽の中に戻すべし。」

これも、水面の上から落とすと飛沫が飛び散り、その湯がレジオネラ菌で汚染されていた場合、エアロゾルを吸引してしまうリスクが高まるからです。

温浴施設の安全性を高めるための法改正でしたが、これらによって湯水の流れ、溢れ、滝といった演出がやりづらくなり、浴室は静かになってしまったのです。

昨今の浴室で人の話し声が気になるようになったことと、無関係ではないと思います。

となると…

---------
この記事は会員限定公開となっており、全文は表示されておりません。

メールマガジン「日刊アクトパスNEWS」をご購読いただくと、毎日全文がメールで届きます。

メールマガジンご購読のご案内はコチラです。