2022年温浴ビジネス展望 2

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今日は 2022年1月6日です。

 前号では新年最初の記事ということで、「初期投資の重たい温浴施設が激しい時流変化に対応するためには可変性と段階的投資が必要」という考えを長めに述べましたが、このペースで展望を書いているとずっと展望シリーズが続いてしまうので、残りの気になっていることは要点をまとめて書きたいと思います。

◆2022年温浴ビジネス展望 2

人件費高騰と人材確保難

 コロナ禍で何度も緊急事態宣言が繰り返されましたが、とりわけ影響が大きかったのは飲食業界でした。

時短営業や休業要請などの直接的な規制対象となり、長期休業をせざるを得なかった店も多かったのですが、その際には協力金や助成金という形でなんとか廃業を回避していました。

しかし、元々パート・アルバイトへの依存度の高かった雇用は維持することができず、多くの非正規社員は職を求めて他の業界に移っていきました。

そこからいざ営業再開となっても、いったん他の業界に収まってしまった人材はなかなか戻ってきてはくれません。

年末の新聞紙上でも話題に取り上げられていましたが、居酒屋チェーンでは何万円ものアルバイト入社お祝い金、紹介報奨金、時給の大幅引き上げなどの対策で必死に人材確保を試みるも難航しているようです。

indeedなどの求人情報サイトの検索条件を見ると、入社お祝い金の額を競うような募集になってきていることが分かります。今は外国人スタッフの雇用も困難ですから、サービス業の人材確保難はいよいよ深刻です。

これは温浴業界にとっても同様です。これまでの温浴ビジネスは、できるだけ人手に頼らない装置産業的な考え方で、時給水準を抑えつつ省力化で収益性を高める手法が主流でした。

しかし、最低賃金に近いような募集の水準では、もう運営に必要な人員を揃えることが難しくなりつつあるのです。

そもそも省力化とは、即ちハードの力だけに頼る経営スタイルであり、結局資金力のあるところが勝ち、という構造に向かいます。同じ土俵で生き残れるのは一番店だけ、ということになってしまうのです。

生き残るためには、マンパワーで付加価値を高めるようなスタイルに変えていくことが必要ということを、ずっと申し上げてきたのですが、この人件費高騰と人材確保難によって、その方向に向かうしかなくなったと考えています。

他業界に負けないよう給与水準を上げて、優秀な人材を確保する。そのソフトの力でサービス業としての魅力を高めていく。温浴業界は、そのような方向に転換せざるを得ない時期に来ていると感じています。

建築工事費高騰と物価高

 メルマガ第1730号「環境変化と新業態(3)」(2021年12月24日執筆)でもお伝えしましたが、建築工事費高騰が続いています。

さらに、円安と物価高が気になる動きを示しており、スタグフレーション(景気後退と物価上昇の同時進行)を危惧する声も目立つようになってきました。

このことも、これまでの温浴施設経営のセオリーが限界であることを示しています。

1坪あたり収容人員、10分あたり入館料といった常識に縛られたままでは、建築工事費や物価の上昇、さらに前述の人件費高騰といった経営環境の悪化に対応できないのです。

外部環境を経営努力で変えることはできません。自らの努力で変えられるのは、スタッフの生産性です。この点でも、ソフトの力でサービス業としての魅力を高めていくという方向転換が急速に進むものと考えます。

ハードからソフトへ

 かつてのニュージャパンサウナでは…

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