温浴施設のバックヤードに設置された業務用洗濯機と乾燥機、および備品棚

建築コストの高騰がとまりません。新築はもちろん、既存店の大規模改修であっても、上がってきた見積書を見て頭を抱える経営者の方は少なくないはずです。少しでも初期投資を抑えたい、限られた手元資金と借入枠の範囲内でなんとか形にしたいと願うのは経営者として当然の心理です。

一方で、水光熱費や人件費をはじめ、あらゆる資材や消耗品の物価も上がり続けています。毎月送られてくる請求書の数字にため息をつきながら、少しでも日々の運営コストを抑えたいと知恵を絞るのも、また切実な現実です。

「初期投資を抑えたい」

「運営コストを抑えたい」

どちらも温浴事業者にとって偽らざる本音ですが、厄介なことに、この2つのコストは時として正面から衝突します。いわゆるトレードオフの関係です。

例えば、タオルや館内着の自社洗濯とリネンサプライの問題があります。

自社でランドリー機器を備えて洗濯する場合、専用のランドリースペースを確保するための建築費や限られた床面積の占有が発生します。さらに大型の洗濯機や乾燥機への設備投資が必要です。オープン後も設備を動かす水光熱費、定期的なメンテナンス費用、そして何よりリネン作業にあたるスタッフの人件費がかかり続けます。

一方、自社ランドリーを諦めて外部のリネンサプライ業者に委託すればどうでしょうか。機械への投資もスペースも不要になるため、オープン時の初期投資は大幅に軽減されます。一見するとスマートで合理的な判断に見えます。

しかし、その代償として、毎月発生するリネンコストはリネンサプライ業者の請求に対してほぼいいなりです。エネルギー費や物流費の上昇を理由に値上げを求められても、「嫌なら他を探してください」と言われれば受け入れざるを得ません。今やリネン業者自体が人手不足で新規の引き受けを断る時代ですから、価格交渉の主導権は完全に相手側にあります。

果たして自社洗濯とリネンサプライ、中長期的な経営視点に立ったとき、どちらが本当に有利なのか。本気で数字をはじき、シミュレーションを重ねて決断したことがあるでしょうか。

水や熱の問題もまったく同じ構造を持っています。

井戸を掘削して地下水を利用しようとすれば、数百万円から数千万円の掘削費や水処理の設備投資がかかります。水質や水量の不確実性というリスクも背負わなければなりません。最初から水道水に頼れば、そうした初期投資やリスクはきれいに回避できます。しかしその瞬間から、水を使えば使うほど水道料金という重荷が経営にのしかかり続ける構造を自ら受け入れることになります。

省エネ技術の導入も同様です。ヒートポンプや排熱回収システム、太陽熱利用、あるいは断熱・遮熱性能の強化など、エネルギー消費を劇的に下げる技術は多々あります。これらは導入時に決して小さくない初期投資を求められますが、稼働後は毎月の光熱費を確実に抑えてくれます。

純粋な経済合理性だけで考えるなら、計算は極めてシンプルです。
「イニシャルコスト +(年間ランニングコスト × 想定年数)」を算出し、5年や10年のスパンでどちらがトータルで有利かを比較すればよいだけのことです。小学生の算数でも答えは出せます。

しかし、実際の施設計画の現場でそうした合理的な選択がなされるかといえば、残念ながらそうはいきません。
なぜなら…


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