白い背景のなかで、上部から注がれた水が水面に激しい気泡を伴う渦を作り出している様子。

このメルマガは2016年の創刊以来、おかげさまで10年という歳月が経過し、まもなく累計3000号という大きな節目に到達しようとしています。日頃から熱心にお読みいただいている温浴関係者の皆様には、心から感謝申し上げます。

ふと思い立って、創刊間もない2016年のバックナンバーを読み返してみました。

当時は予測や仮説として書いていたことが、今ではすっかり業界のスタンダードとして実現しているものもあれば、逆に、思うようにその考え方が広まらず、いまだに同じ熱量で繰り返し書き続けているようなテーマも多々あることに気づかされます。

2016年当時の温浴業界を思い出してみてください。ロウリュをやる温浴施設がジワジワ増えつつはあったものの、サウナブームの兆しはまだ顕在化しておらず、今や誰もがスマホでチェックする「サウナイキタイ」というサイトすら存在しなかった時代です。そんな中で「これから絶対にサウナの時代が来ますよ!」といくら声を大にして訴えても、周囲に理解してもらうことは非常に難しい環境でした。

2016年3月7日、ちょうど「サウナの日」に配信したメルマガ第35号に、私は「サウナのこれから」というタイトルで、次のような予測を書き綴っていました。少し長くなりますが、当時の文章をそのまま引用します。

──これからの日本の温浴は、必ずサウナのウエイトが高まってくる。私はそう考えています。
理由はたくさんあります。真面目に語り出すととても長くなりそうなので簡単に列記してみましょう。

・元々日本の「風呂」とは湯よりも蒸し風呂のことを意味しており、日本人の気質や風土とサウナ(熱気浴や蒸気浴)は馴染みが良い。

・近年は「天然温泉」が温浴ブームをけん引してきたが、泉質や湯量、排水環境に恵まれた源泉でない限り井水や水道水の沸かし湯と大差ないか、むしろ沸かし湯に劣るケースすらある。温浴施設に一般的な濾過循環塩素注入の温泉は「単純塩素泉」と揶揄され、その価値が疑問視されている。

・レジオネラ菌問題や塩素問題で技術的な壁に行きあたっている「湯」に比べて、サウナ技術は発展の余地が大きい。日本とヨーロッパのサウナを比べてもまだ大きな差がある。

・同じ面積につくる温浴設備として比較すると、湯とサウナではイニシャルコストもランニングコストも圧倒的にサウナが優位。省コスト、省エネは時代の要請であり、大量の水とエネルギーを消費する浴槽を今以上に増やしたり大きくすることは難しい。

・同じスペースに何人収容できるかを比較しても、浴槽よりサウナの方が効率が良い。また貯湯槽、ボイラー、ポンプ、薬注機、濾過器等が必要な浴槽と比べて、サウナ設備は圧倒的にコンパクト。サウナスペースを大きくとることで建築コストが高い浴室周りを小さく設計することができる。

・泉質や環境によってその魅力や効果が千差万別となってしまう温泉に比べて、サウナの効果は安定的であり、医学的なエビデンスも得られやすい。

・これまで都市型サウナの出店が先行したことから「サウナは酔っぱらったオヤジが行くところ」といったイメージが定着していたが、スーパー銭湯や岩盤浴の普及でサウナ体験が一般化してきており、若い世代や女性にもサウナファンが増えている。さらにロウリュイベントが話題になったり、北欧ブームからサウナ文化が注目されるなど、かつてのイメージは払拭されつつある。

といったことです。
簡潔に書いたつもりでも長くなってしまいましたが、これだけの材料があればサウナが台頭しないはずはないと思うのです。──

当時のメルマガではこのように、かなり明確な理屈で温浴の未来を説いていました。今読めば「その通りだ」と納得していただける内容かと思いますが、当時これをメルマガやセミナーでいくら発信しても、周囲からは「また変なことを言っている」という目で見られるばかりで、私の考えに賛同してくれる人はほとんどいませんでした。

まだ現実に起きていない未来を、言葉の力だけで信じてもらうのは本当に難しいものです。それどころか、ブームが完全に定着した今になっても、どうしてサウナがこれほど支持されているのか、その本質的な理由がピンと来ていない人さえいるのが現実です。多くの人にとって、実際に自分の身に起きたことや、自分の目で直接確かめた現実でない限り、新しい時流を確信することは容易ではないのでしょう。

創刊当時のメルマガ読者登録数はまだ30人くらいしかいなかったと記憶していますが、当時の温浴業界で私の考えに理解を示してくれたごくわずかな人たちは、世に先んじてサウナ環境への投資や強化に取り組み、いまや全国でも名だたる繁盛店へと変貌していきました。

2016年当時にサウナの未来がなかなかご理解いただけなかったのと同じように、実は今、このメルマガで繰り返しお伝えしているにもかかわらず、世間一般にはまだその真意がご理解いただけていないテーマが、ほかにもたくさんあります。温浴の本質的な価値の捉え方や、これからの時代を生き抜くための持続可能な経営のあり方など、私の中では確信があっても、まだ多くの人には「見えない・信じられない話」のままなのです。

「箸よく盤水を回す」という諺があります。たらいに張った大量の水を、一本の細い箸でかき回そうとしても、最初は小さな波紋が起きるだけで、水全体を動かすことなど到底できないように思えます。このメルマガも、その一本の細い箸のような存在かも知れません。ひとつの記事、一回の発信だけでは、業界全体に与える影響は微々たるものです。

しかし、正しい時流を見据え、自然の理にかなったメッセージを毎日毎日、諦めずに書き続けているうちに、小さな波紋はいつしか連鎖し、やがて盤の水をぐるぐると動かすような、途方もなく大きな渦を巻き起こす原動力に変わるかも知れません。

このメルマガを通じて、すべての温浴経営者に直接影響を与えることはできなくても、熱い志を持った一部のリーダーたちが共感し、実践してくださることで、間接的に業界全体へ素晴らしい変化を波及させることができる。そう信じているからこそ、私は毎日の執筆を続ける意味を見出しています。

読者の皆様が増えれば増えるほど、この箸が作り出す渦は大きくなり、温浴業界が真の発展へと向かうスピードも確実に速まります。もし皆様の周りに、まだこのメルマガの存在をご存じない業界仲間の方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介いただけるとこれ以上の喜びはありません。これからも皆様とともに、温浴の新しい未来を紡いでいきたいと考えております。
(望月 義尚)

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