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今日は 2022年3月1日です。

温浴施設は持続可能-2

(1)災害への備え

 我が家はマンション住まいですが、上水道は共有の受水槽に貯めてから各戸にポンプで送る方式です。

災害時には、たとえ水道管が寸断されても受水槽に水が貯えられているので備蓄となり、しばらくは断水に耐えられるはずなのですが、停電になるとポンプが動かず、給水も止まってしまうリスクがあります。

東日本大震災の計画停電の際には、停電イコール断水という事態に直面しました。断水となればトイレも流せなくなりますので、困ったことになります。

最近は受水槽方式よりも直接給水方式が増えているそうです。

どちらの方式が良いとは一概に言えないと思いますが、直接給水なら受水槽が要らず、槽内の衛生管理も不要です。一方で災害時の備蓄はないので、各家庭でペットボトルの飲用水などの最低限の水をストックして備えるしかありません。

いずれにしても、私たちは地域の送電線・上下水道・ガス管などのライフラインが止まるとたちまち困ったことになるという脆弱な基盤の上で生活しています。

災害大国日本では、毎年必ずどこかで地震や火山噴火、異常気象、水害などの被害が発生しています。いつ災害に直撃されるか分からないルーレットを皆でやっているようなもので、絶対に安全な場所などありません。

たとえ災害に遭っても、せめて生命がすぐに脅かされることのないよう、最低限の備えはしておくべきなのです。その点で何かあるとすぐに水が止まってしまうような環境は深刻な問題といえます。

(2)温浴施設の備え

 ところで、温浴施設は大量の水を消費します。経営環境や設備によってその消費量は様々ですが、おしなべて言うと1客あたり300リットルくらい。客数年間10万人の施設なら1日平均82トンもの水を使っているのです。

1人の人間が生きるのに必要な水の量は1日あたり3リットルと言われますので、温浴施設が使う水の量は82,000リットル÷3=27,333人分の命をつなぐ水に相当します。

給水のすべてを上水道に頼る施設は少なく、たいてい自家源泉や自家井戸を使っています。水質が浴用に適さない場合は、浄化装置も備えています。いざとなれば、1施設が数万人分の水を供給することが可能なのです。

ただし、ポンプなどの設備は電力を使用していますので、我が家と同じように停電しただけですぐ使えなくなるようでは災害時に役には立ちません。自家発電装置や蓄電によって電力が自力供給可能な状態になれば、停電と断水に耐えて被災した地域住民に水を供給できる頼もしい存在となれるのです。

(3)消滅可能性都市

 長野県に親から譲り受けたわずかな土地があるのですが、何年か前に自治体から「利用者減少で、老朽化した下水道を更新することができないため、今後は浄化槽方式に順次切り替える」との通達がありました。住んでいるわけではないので今のところ影響はないのですが、もしその土地を使うとしたら浄化槽を作る必要に迫られます。

いま日本では、人口減少、地方の過疎化、少子高齢化などによって、公共インフラが徐々に維持できなくなりつつあります。

そもそも2040年には全国自治体の約半数が消滅の可能性といわれているのですから、もはやインフラ整備どころではないのです。

地方の自治体では、莫大な設備投資が必要で採算の取れない公共水道事業を持て余し、民間に水道事業を売却するケースも出てきました。

民間企業が資本の論理で不採算事業を整理すれば、今まで便利に使っていた上下水道が使えなくなる地域が増えてくることになるでしょうし、安全安心な水質が確保されるかどうかも分からなくなります。

上下水道を使っている温浴施設にとっても、まさに足元から経営環境が崩れてしまう恐れがあるのです。

地域まとめて公共上下水道で面倒を見れるのは、人口が密集する一部の都市区域に限られてくる。この流れはもう止めようがないでしょう。

これまでは、下水道整備区域では下水道への接続を義務化し、厳しく利用料金を徴収することでインフラの整備と維持を図ってきましたが、そもそもの利用者が減っていく一方では、徴収強化では追いつきません。

これからは、給排水はできるだけ自給自立の方向へと切り替わっていくことになります。

(4)銭湯に迫る危機

 気になるのは、銭湯です。多くの銭湯は公衆衛生を提供する社会インフラとしての役割を果たす(物価統制令で定められた安価な公衆浴場料金で営業する)代わりに、上下水道料金の特別な減免を受けてきました。

その前提で上下水道を利用してきたので、新たに井戸を掘削したり浄化設備に投資する体力がない銭湯も多いでしょう。

もし水道事業が民間企業に移管されたり、水道事業が廃止されることになれば…

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