対談~温浴業界の生き字引、中村敏之が語る「サウナ今昔物語(第6回)/若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ」(聞き手:アクトパス代表・望月義尚)

(第6回)サウナブームと言われる今、現役設計プランナーとして最も長くサウナ業界に携わってきたアクアプランニング代表・中村敏之と、25年に渡って活動してきた最古参の温浴専門コンサルタント、アクトパス代表・望月義尚が、日本のサウナの歴史と現在のサウナブーム、そして未来をテーマに対談しました。サウナビジネスに関わっている方やサウナファンにも知っていただきたい興味深い話が続々と登場します。全8回に分けて、アクアプランニングとアクトパスのホームページでリレー方式で公開していきます。

【目次】

第1回「サウナ業態は2極化する?」(アクアプランニングサイト)

第2回「フィットネスとサウナは真逆の業態」

第3回「お風呂でおでんが食べられたニュージャパン」(アクアプランニングサイト)

第4回「脱衣場からいきなりサウナ室?」

第5回「外気浴のニーズが高まっている」(アクアプランニングサイト)

第6回「若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ」

第7回「ブームを終わらせないために~安全管理の課題」(アクアプランニングサイト)

第8回(最終回)「水風呂のバリエーションと、サウナブームのこれから」

第6回 若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ

望月) これニュージャパン・レディスサウナの露天水風呂。90センチもあって深いですね。モザイクタイルも丸く仕上げてます。

中村) すごいです。よく考えて作ってるなと。

望月) これは内風呂にあったテレビ付き足湯ですね。

司会) テレビが1席に1つずつ付いてるんだ。すごい。

中村) 「足湯につかってる間さえ退屈させない」というその気遣いがすごいですよね。

望月) そうですね。

中村) やっぱり、すごいなと思います。
ここまで良いものがあったのに、誰もそれを真似ようとは思わなかったんですよね。当然コストの問題もあると思いますが。

望月) 今のブームでサウナ経営をしたいって人が知らない可能性が高いですよね。

中村) もちろん知らないと思いますね。

望月) このような究極の工夫を凝らしたサウナがあったっていうことを知ることが大切だと思います。今あるものだけを見てても知ることはありませんからね。コストは忘れて質を高めることだけを考えれば、昔の施設からしか得られない知識や工夫があるということですよね。話としてはすごく面白いと思いますし、質を高めたいと思ってる人もいると思うんです。「良いものを作りたい」って言ってるけど、本当に良いものを見たことがない可能性もあるのでその辺の話はすごく面白いと思いますね。

中村) コストの話も出ましたけど、やはりメリハリは大事なのかなと思いますよ。お金をかけるところはとことんかけて、抑えるべきところは徹底してコストを下げる工夫をするということです。それでも格好良く作ることができたら面白いですよね。それを上手くやった施設がドシーなんです。ただ、すごく簡単な材料に見えるんですが、実は使われている材料はすごくお金がかかるものらしいんですよね。 それでもヒントはそういうところにあるかなと思っていますね。見た目はチープに見えるんだけど、使い方によっては凄く高級にも見えるっていうものを上手に使っていけば面白いのかなって思いますね。そんな話をしながら思い出したのが、ほったらかし温泉です。基本的にはプレハブの組み合わせですもんね。だからそれなりの内装にはなってしまっているんですが、もう少し上手く工夫をすることで、そこそこ綺麗には見せられそうですよね。それでいてサウナ室だけは立派な施設を作るのは、ひょっとしたらできるのかもしれないですよね。いずれにせよ工事費は上がり続けています。望月さんがよく言いますけど、市場規模は段々右肩下がりになってきて、工事費が右肩上がりになってきてるから、そこはどうにもならないと思いますね。

望月) だから同じような施設を作るとしても投資がどんどん増えてしまっています。だからこそ、高客単価の世界に持っていかないと経営的に立ち行かないですよね。

中村) 本当にそうですよね。

望月) だけど今のサウナブームはまだそこに向いてないし、施設側もソフトのサービスから逃げてしまっていますね。ハードの良いサウナを作ればお客さんが来てくれる、という方向に走ってしまっている気がしますね。

司会) そうですね。仕組みを売ってる感じになってますね。

望月) 運営者としてサウナへの愛が強すぎる人ってのもどうかと思いますが、ビジネス的な目線でしか考えられない人が作ってしまうとが逆に面白くなくなってしまう気がします。

司会) そういうサウナ施設が増えすぎるとブームも早く終わってしまいそうな気がしますね。

望月) 最近、地方で個室サウナをやりたいって人からの問い合わせが凄く多いのですが、基本的にオススメしてないです。 その狙いはたぶんソロバン優先ということ。ソロバンをちゃんと突き詰めれば「儲からないからやめとこう」ってそうなるべきなんです。我々も「普通に考えて儲からない」って思いますね。それでもやりたい人しか突破できないと思います。

中村) 最初にやった人はそれなりに儲けていたと思うんですけど、後の人がそれを真似して普通に作ってしまったら中々うまくいかないんですよね。

望月) これからサウナを中心にした施設を作っていくとしても、サウナ設備だけじゃなくて施設体験全体で売っていくことを考えないと商売としてもうまくいかない時代になっていくということですね。サウナ・水風呂・外気浴だけで5000円取れるかっていったらやはり無理ですからね。今は珍しさ故に4000円の個室とかありますけど、いずれ1800円以下の普通の入浴料の世界に落ちていくだろうと思います。そのときに踏みとどまるためには、食事やマッサージ等が組み合わさった体験全体で売っていかないと踏みとどまれないんですよね。

第7回(アクアプランニングHP)に続く…