対談~温浴業界の生き字引、中村敏之が語る「サウナ今昔物語(第8回・最終回)」(聞き手:アクトパス代表・望月義尚)

(第8回・最終回)サウナブームと言われる今、現役設計プランナーとして最も長くサウナ業界に携わってきたアクアプランニング代表・中村敏之と、25年に渡って活動してきた最古参の温浴専門コンサルタント、アクトパス代表・望月義尚が、日本のサウナの歴史と現在のサウナブーム、そして未来をテーマに対談しました。サウナビジネスに関わっている方やサウナファンにも知っていただきたい興味深い話が続々と登場します。全8回に分けて、アクアプランニングとアクトパスのホームページでリレー方式で公開していきます。

【目次】

第1回「サウナ業態は2極化する?」(アクアプランニングサイト)

第2回「フィットネスとサウナは真逆の業態」

第3回「お風呂でおでんが食べられたニュージャパン」(アクアプランニングサイト)

第4回「脱衣場からいきなりサウナ室?」

第5回「外気浴のニーズが高まっている」(アクアプランニングサイト)

第6回「若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ」

第7回「ブームを終わらせないために~安全管理の課題」(アクアプランニングサイト)

第8回(最終回)「水風呂のバリエーションと、サウナブームのこれから」

第8回(最終回) 水風呂のバリエーションと、サウナブームのこれから

中村) 夏はともかく、現代人ってなかなか汗をかく機会がなくなってきているので、サウナで汗をかくこと自体は凄く良いと思うんですよね。ただ、冷たい水風呂は危ないと感じているので、冷たさだけにこだわるんじゃなくて不感湯に近い水風呂の良さも広まってほしいところです。

望月) 8HOTEL SHONAN FUJISAWAは30度の浴槽がありましたね。

中村) それもありなんだっていうことが広まってくれると嬉しいです。

望月) 水風呂は何種類かあってもいいと思うんですよ。

中村) 深さは良いとしても、冷たければ冷たいほど良いっていう方向にどんどん向かってしまっていることは危険だと思います。冷たい水風呂ばかりでなく、限りなく体温に近いぐらいの温度ぐらいまではアリだと考えています。

望月) 神戸サウナにも「ここで練習しましょう」という23度の初心者向け水風呂がありました。

中村) 初心者向けって言っちゃうと駄目かもしれませんね。初心者用、上級者用というふうに分けるのではなくて、これも一つの楽しみ方なんですよっていう考えが定着してくれば自分の体調とか年齢に合わせて選べるじゃないですか。発汗自体はした方がいいと思うんです。怖いのは極端な温度差なんですよ。

望月) ニュージャパンSpaPlazaの露天にあった水風呂は22℃でしたね。

中村) あえてそんな温度だったんですね。

望月) はい。あれだけサウナにこだわってたニュージャパンが22度で設定していました。

中村) それを新たなトレンドとして提案してはいかがでしょうか?温度設定が高めの水風呂を「初心者用」として打ち出すのではなく、「ととのう」ための冷たい水風呂とは別の「癒やし」のための水風呂という方向性で。「ゆる水風呂」というような女子にも受ける名前をつけることで認知度が高まれば、ヒートショックの心配もいくばくか抑えられると思いますね。

司会) 開発費が上がっていく一方で、サウナ事業への新規参入は今後どのような流れになっていくと予測しますか?

中村) スタイルは変わっていくと思いますが、新規参入については引き続きあると思います。昭和38年か9年に日本に入ってきてから残り続けているのにはそれなりの理由があるわけですから、サウナを主とした業態っていうのはこれからもずっと続いていくと考えています。あと、開発費に関しては風呂を作るよりサウナを作った方が全然コストがかからないんですよね。私達が試算したときは、ランニングもイニシャルも6掛けぐらいになるというような費用感でした。それからしても、非常に理にかなってる業態とは思いますね。10年前くらいですが、花王のアンケート調査で若い人があまり風呂に入らないっていう統計を見たことがあるんですよ。要するにシャワーだけで済ましていたっていう。それは、これから5年10年でさらに顕著に出てくると思いますね。やはり風呂に入るのが面倒くさい人って相当数いるのかなって考えてます。それに代わるものが少し前だと岩盤浴、今はより刺激的なサウナ。熱い、冷たいっていうのがより顕著に現れますからね。本当にまだまだこれから発展していく分野だと思います。

望月) 以前、サウナイキタイのサウナ施設と人口の関係を分析したことがあります。首都圏は3000万人ぐらいのマーケットボリュームに対してサウナがまだまだ足りてないという結果が出ました。東京には沢山のサウナ施設があるように見えるんだけど、実は不足している。

司会) 不足しているというか良いところが少ないってことですかね。

望月) そう。そういう意味ではまだまだ増えるだろうと考えています。ブームって意味では、やはり東京の人がすごいサウナに関心が高まって、地方はまだそこまで盛り上がってない。しかし、少しずつでも必ず波及していくと考えています。そうすると東京のようなブルーオーシャン状態っていうのは、これから全国に広がってくる、ということですよね。マーケット的にはまだまだ余力があるし、中村さんが言うように昔から続いたもので、一過性のポッと出のものじゃないという意味でも続くはず。唯一怖いことは、先程から出てる事故です。それさえ起こらなければ、今後も順調に発展が続くだろうと思いますね。

ウィスキングやサ飯もこれからどんどん楽しみ方が浸透していく余地が残っていると思います。自社で全部抱えられる施設ばかりではないと思うので、近隣店舗と上手にタッグを組んだりしてサウナの楽しみ方の幅を広げていくことが課題となりそうです。新しくサウナ開業を考えている人も、リスク回避のために最低限の投資で抑えたいという人が多いはずですよね。しかし、温浴業界の将来を考えるならば「関連する他業界ともコラボして皆でマーケットを広げていこう」という方向性が必要だと思います。業界全体で幅広くお客様を取り込みながら、入門者がヘビーユーザー化していくような仕掛けを打っていけるといいですね。

司会) 今後の展望と課題が見えてきたところで…そろそろお時間です。

とても良いお話を聞くことができました。この対談の情報は、サウナ業界内外で広く共有されるべき内容だと思います。読んだ方には是非拡散にご協力いただきたいところですね。

それでは、お二人ともありがとうございました。

中村・望月) ありがとうございました。

<対談終了>


いかがでしたでしょうか? 日本のサウナを知り尽くした2人ならではの、密度の濃いインタビューとなったと思います。

サウナの今後の可能性に加え、ブームを終わらせないための警鐘について、是非拡散にご協力ください。サウナを楽しんでいる方、運営されている方、皆さんで未来を考えていきましょう。


本対談記事は、アクアプランニングと共同で制作いたしました