調理

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今日は 2022年3月9日です。

責任と覚悟

 事務所で使用するプリンターの取扱説明書を見ると、メーカーによってはサードパーティ製の互換インクを使用した場合の保証について制限を設けているか、もしくは保証そのものを受け付けないといったケースもあります。

メーカーとしては、粗悪なインクのせいでプリンターが故障したのに、保証期間内だから無償で直せ、と言われるのは堪りませんから当然のことでしょう。

一方で、プリンター本体の価格を極端に安く販売し、純正インクの価格を高くすることで利益を稼ぐというビジネスモデルが存在することも事実です。消費者としては、すべてメーカー純正で安心を買うか、リスクを承知で安い互換インクを使うか、自分で選ぶことになります。

 似たような話で、最近よく聞くのがサウナの責任施工。ストーブそのものの供給だけでなく、その設計から設置、制御盤、内装工事、届出、試運転調整、アフターフォロー…サウナ室のすべてをひとつの会社がトータルで請け負うということです。

そうすることで責任の所在が明確になり、補償範囲やトラブル時の対応までひとつの会社が一括して引き受けることになり、施主は安心できる、というわけです。

窓口がひとつになるというのは便利ですが、すべての責任をとってもらえるから安心かというと、そんなことはありません。

例えば何らかの原因でサウナの温度が上がらずお客さまを怒らせてしまった時に、メーカーがお客様ひとりひとりに謝ってくれるでしょうか。修理に時間がかかり、その間にお客様の足が遠のいてしまったとしたら、売上減少分を補填してくれるのでしょうか。

責任とは何なのか。それと引き換えに何を失っているのか。そこをよく考える必要があります。

何を申し上げたいのかと言いますと。結局リスクを受け止め、その対処をするのは自分(経営者)自身ということなのです。

ロウリュ対応でないストーブに水をかけたら故障してしまうかも知れない。

海外の安いストーブを使って故障したら、国内に部品在庫がなくて修理に何ヶ月もかかるかも知れない。

サウナ室の換気を強化したら、ストーブの能力が追い付かずに温度が上がらないかも知れない。

そういったリスクを把握して、どうやったら問題が防げるのか、何かトラブルが起きた時にどう対処すれば良いのかまで考えるのが経営者の仕事であり、想定外のことが起きたから誰かに責任をとってもらおうとしても、そうはいかないのです。

技術的なことは分からない、自分で修理はできない、トラブルはイヤだ。そう思うなら、すべてメーカーに任せた方が多少は安心でしょう。

サードパーティ製の互換インクを使うなら、自分で修理するか、高い有償修理になる、最悪の場合プリンター本体を買い替えることになる。その覚悟が必要なのです。

 これは、モノに関することだけではありません。

料理の質にこだわる料理人と経営効率を求める経営者の意見が合わなくて対立、「こんな店辞めてやる!おい、みんな上がるぞ!」と言って、料理長以下、料理人が一斉に退職してしまうことを『総上がり』と言いますが、全員でなくとも、一部の料理人が抜けるだけでもいきなり飲食部門は窮地に立たされます。

今日入っている予約はどうするのか、食事ができないことに失望するお客さま、失われる飲食売上…それを考えると安易に厨房に意見することもできなくなり、厨房が聖域となり、料理長はますます勝手に振る舞うようになり、不正が横行することもある。

これはドラマだけの話ではなく、実際によくあることです。しかし、実際に経営不振や食中毒事件が起きた時に結果責任を取るのは、料理長ではなく経営者です。任せて安心というのは幻想に過ぎず、総上がりでダメージを受けるのは経営者の覚悟が足りなかったということに他なりません。

レシピを共有し、誰でも同じ質の料理が作れるようにする。いざとなれば俺が厨房に立つ。しばらく飲食部門を休止することになっても構わない。そういった覚悟を持って接することで、厨房を聖域化せずに料理人と同じ土俵で議論ができるようになるのです。

 リスクや責任をとるのが経営者の仕事であり、それを怖がっていたら経営なんてできないと思います。かといって、自ら厨房に立って料理をし、ストーブやプリンタが故障したら修理し、と誰にも任せずに自分ひとりで全部やろうとしたら、すぐに限界を迎えてしまうでしょう。

この部分は任せるけど、何かあった時の責任は全部自分がとる。それが経営者としてのスタンスです。難しいことのようですが…

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