ドラム缶風呂2011年

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今日は 2022年3月11日です。

破壊と超回復

 今日は3月11日。多くの被害、犠牲者を出した東日本大震災から11年が経ちました。

現在もまたコロナ禍、そしてウクライナ紛争といった国際的な混乱と危機が続いており、世は再び非常時となっています。

今朝、2011年当時のブログを読み返していていたら、東日本大震災から4日経った3月15日に書いた記事が気になりました。

──3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、東北地方をはじめ、各地に大きな被害をもたらしています。震災に合われた方々、ご家族の皆さまには、心よりお見舞いを申し上げます。

これから被害が拡大していく可能性もあり、今回の震災がもたらす影響を見極めることはまだ難しいですが、現時点で、「日本人の精神性は大きく方向転換するだろう」ということを感じずにはおれません。

震災から2日後、『今値上げしないのはバカ』と被災者の足元をみる商売を自慢げに語った経営者のブログが大炎上しました。拝金主義的な価値観はもう通用しなくなったのです。

直接の被災地でなくとも、日本人の多くが危機や不幸に直面しています。これから先にも様々な困難や不幸が待っているかも知れません。そのような状況のもと、人間性が感じられない商法が受け入れられないのはもちろんのこと、今後は浮ついた消費マーケットにも厳しい逆風が吹くのではないかと想像しています。

もはや贅沢をしたり遊んだりしている場合ではないし、そんなことをするお金や時間があるなら、被災地の支援でもしたらどう?と思う機運が高まるのではないでしょうか。

誰でも息抜きや休息が必要な時はありますが、それは必要最低限にあればいい、ということになっていく気がします。

ということは、温浴施設の存在意義は、生活衛生、休息、健康増進といった基本機能に再び収束し、贅沢な時間や、癒し、美容といった消費をつかまえるのは難しくなってくるのではないかと思うのです。

それは、大商圏・高単価・長時間滞留型の施設よりも、小商圏・低単価・短時間利用の施設が支持される傾向が強まるということになるのかも知れません。

もうひとつはエネルギー問題です。原発の怖さをまざまざと見せつけられる一方で、停電になるとどれほど生活に困るか。そこまで原発の電力に依存してしまった今の社会はいったい…ということに意識が向くのではないかと思います。

いま若干パニック状態になっているガソリンや重油の不足にも、同様の影響が考えられます。そうなると、今後は節約、省エネ、環境といったことへの意識がより高まるのではないでしょうか。

今までのように地球温暖化といったちょっと遠い世界の話ではなく、今回は自分の恐怖体験として心に刻み込まれたので、非常に強い流れになることが予想されます。

ここでも、エネルギーを大量に消費する贅沢なビジネスは、厳しい逆風にさらされる可能性があるのではないかと考えられます。

まだまだ危機は続いていますし、今後どうなっていくのかを見極めることは難しいのですが、以上のようなことを考えただけでも、温浴業界は大きな方向転換をせざるを得ないのではないかと感じています。──

温泉・温浴コンサルタントブログ【一番風呂日記】 震災の体験がもたらすもの 2011.03.15

あらためてのこの文章の要旨をまとめると、
(1)非常時には拝金主義が排除され、人間性重視となる
(2)非常時には不要不急ビジネスは役割を失う
(3)非常時には商圏が縮小する
(4)非常時には資源やエネルギーを無駄にできなくなる

ということです。

震災から4日後のパニック状態の中で思ったことですが、今読んでもその通りだと思います。

私の想像と少し違ったのは、想像以上に人は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということ。

震災によって世の中が根本的に方向転換するのかと思ったのですが、月日が経つと多くのことは平常モードに切り替わっていきます。そして再び危機が訪れると慌てて非常時モードになる。人間社会はいつもそれを繰り返す、ということのようです。

しかし、緊張と弛緩を繰り返しているだけで何の進歩もないのかというとそうではなく、危機を教訓に様々な対策が講じられます。震災で言えば防潮堤を立てたり、耐震基準を見直したり、原子力発電から自然エネルギーに移行したり…。完璧ではないかもしれませんが、それらの手を打った結果として徐々に安心を得て、平常モードに戻っていくのです。筋肉の破壊と超回復現象に似ていて、前よりは強くなっています。

今回の危機は、人間社会に、そして温浴業界にどのような進歩をもたらすのでしょうか。安心を得るまでには、まだまだ手を打たなければならないだろうと思っています。

(望月)

震災直後の南三陸町