いま、1962年(昭和37年)創業の大型温浴施設のリニューアルプランを練っています。
創業から64年。私よりも年上の老舗ですが、今なお現役。その歴史を紐解くと、日本の温浴業界が歩んできたダイナミックな変遷が鮮やかに浮かび上がってきます。
戦後の日本で「外風呂」と言えば、日常の「銭湯」か、「温泉地に出向く」かの二通りでした。つまり、入浴そのものを目的とした消費行動です。
そこに革命を起こしたのが、1955年に登場した「船橋ヘルスセンター」でした。
「温泉デパート」と銘打ち、大浴場にレジャー要素を融合させたこの業態は、年間450万人という驚異的な集客を記録。全国にヘルスセンターや健康ランドが乱立する温浴のレジャー化時代の幕開けです。
冒頭の施設もこの波に乗り、創業から30期連続黒字という黄金時代を築きました。
転機はバブル崩壊後に訪れました。30期の黒字から一転、12期連続の赤字へ。
原因は不況によるレジャー控えだけではありません。新たな時代の寵児「スーパー銭湯」の台頭です。
当時の健康ランドが入館料2,000円前後だったのに対し、スーパー銭湯は500円前後。
・銭湯と比べると: 圧倒的に充実した設備
・健康ランドと比べると: 遜色ない設備を「圧倒的低価格」で提供
これは単なる安売りではなく、技術革新とオペレーションの工夫に支えられたローコスト経営という革命でした。勝負の土俵が根底から覆されたのです。
私が温浴業界に携わり始めたのもこの頃です。仕事の多くは「スーパー銭湯の新規開業支援」か「苦境に立たされた健康ランドや都市型サウナの業績改善」のいずれかでした。
冒頭の施設も、12年連続赤字を経て廃業か再生リニューアルかの岐路に立たされ、大きな決断を下します。
ヘルスセンターの名を捨て、温泉と歴史をテーマにした独自業態へ転換。当時流行の岩盤浴や源泉掛け流しを採り入れ、2005年にリニューアル。以来20年、好調を維持してきました。
しかし今また、施設の老朽化と共に、次なる手を打つべき時が刻々と近づいています。
振り返れば、業界を揺るがす新業態は、面白いことに「約20年周期」で登場しているようです。
・1960年頃…ヘルスセンター/温浴のレジャー化
・1980年頃…スーパー銭湯/ローコスト経営
・2000年頃…岩盤浴/癒し・水を使わない温浴
・2020年頃…小規模サウナ/個・体験へのフォーカス
現在、「ヘルスセンター」の名称で営業を続ける施設はほとんど姿を消しました。私が知る限り、もう絶滅してしまったのではないかと思います。
しかし、形を変え、看板を変え、事業として生き残っている場所はあります。
共通しているのは、「大きな時代の流れとどう向き合うか」を問い続け、変化を恐れなかったことです。
次なる20年を見据えた時、私たちはどの波に乗り、どのような価値を届けるべきなのか。
その判断が20年後に生き残れるかどうかの分かれ道なのかも知れません。
(望月 義尚)
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