こんにちは、アクトパスNEWS編集局です。
日刊アクトパスNEWSでは、温浴業界で働く方々へのインタビュー企画をお届けしています。第一弾では、温浴施設向けの業務用品を幅広く扱うニシカワヤ株式会社の営業部長・岡崎龍一郎さんにお話を伺っています。
第1回では、ニシカワヤが温浴業界と関わるようになった経緯と、1975年に生まれた「日本初とされるサウナマット」の物語をご紹介しました。
第2回では、岡崎さん自身の歩みに迫ります。現在は営業部長として温浴業界の変化を見続けている岡崎さんですが、入社時からこの業界や営業の仕事を志していたわけではありませんでした。
【アクトパス原田】
岡崎さんは、ニシカワヤに入社されて何年になりますか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
34年になります。自分では、無駄に長く過ごしてきただけだと思っていますが(笑)。
【アクトパス原田】
入社前は、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
お茶のルート営業を3年ほどしていました。スーパーを回り、売り場に並ぶお茶を納める仕事です。
ただ、職場まで車で1時間半ほどかかっていたので、もう少し自宅から近いところで働きたいと思っていました。そんなとき、たまたまニシカワヤの求人を見つけたんです。
求人には、化粧品などの配達と書いてありました。以前、酒屋でアルバイトをしていて、ビールなどの重い商品を運んでいたので、「化粧品なら軽そうだ。配達も楽そうだな」と思って応募しました。
【アクトパス原田】
実際に入社してみて、いかがでしたか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
思っていたのとは、まったく違いました(笑)。
業務用のシャンプーなどは、一箱20キロほどあります。当時のサウナや健康センターにはエレベーターがない施設も多く、その重い箱を手で3階や4階まで運んでいました。
当時は飲料の自動販売機も扱っていたので、オロナミンCを5ケースほど階段で運び上げることもありました。「これができなければ駄目だ」というような時代でしたから、軽い商品を運ぶつもりで入ったのに、以前よりずっと重かったですね。本当に過酷だと思いました。
【アクトパス原田】
もともと、お風呂やサウナがお好きだったわけではないのですか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
入社した時点では、温浴業界に特別な思いはありませんでした。「こういう施設があるんだ」というくらいです。
それに、今は営業をしていますが、当時は営業職もあまりやりたくありませんでした。人と話して売る仕事より、商品を黙々と運ぶ方が自分には合っていると思っていたんです。それが、いつの間にか営業になっていました。
【アクトパス原田】
そこから34年間続けることになるとは、想像されていなかったでしょうね。仕事が面白くなったきっかけはありましたか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
営業になり、お客様の施設のオープンに立ち会うようになってからだと思います。
昔は施設がオープンすると、納入業者という立場を越えて、現場にどっぷり入って手伝っていました。サウナマットを畳んだり、営業終了後に浴室を掃除したり、施設のスタッフと同じように何でもやりました。
朝から営業終了まで働き、片付けが終わった夜中の1時、2時から「飲みに行くぞ」となり、朝6時、7時にはまた施設へ戻ってオープンに立ち会う。そんなことも珍しくありませんでした。
過酷でしたが、楽しかったですね。若いアルバイトスタッフも同世代で、みんなでワイワイやりながら、寝ずに朝まで働く。我慢大会のようでしたが、会社で仕事をしているより、その現場にいる方が新鮮で面白かったんです。
【アクトパス原田】
一方で、長い営業人生の中には、楽しい思い出だけでなく、苦しい経験もあったのではないでしょうか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
何度もあります。営業マンにとって一番つらいのは、納めた商品の代金を回収できないことです。
スーパー銭湯が増え始めた頃は、施工会社から受け取った手形が、期日に決済されるか分からないこともありました。施設をつくって間もなく、施工会社が倒産してしまうこともありました。
支払いがなければ会社に迷惑をかけます。「本当に手形が落ちるのか」と待っている時間は、精神を削られました。営業を続けていれば、土俵際まで追い込まれるような経験は何度もあります。
【アクトパス原田】
ニシカワヤでは、現在も営業担当者が最初に配達を経験すると伺いました。
【ニシカワヤ岡崎さん】
はい。途中で営業職として直接採用したこともありましたが、なかなかうまくいきませんでした。そのため、基本的には配達をしながら商品とお客様を覚え、その後に営業になるという流れを続けています。今の営業担当者も全員、配達から始めています。
最初の数年間は、いわばお客様の「御用聞き」です。「これが欲しい」「こういうものはないか」と言われたら、それに対する答えを持っていく。その繰り返しで、商品だけでなく、お客様や施設の現場も覚えていきます。
【アクトパス原田】
営業として大切にしてきたことは何でしょうか。
【ニシカワヤ岡崎さん】
若い頃、上司から「お客様が直球で投げてきた球は、直球で返せ。速い球は速く返せ」とよく言われました。要望を受けたら、相手の熱量と速度に合わせて、素早く答えを返すということです。
それと、営業はお客様のところへ行った回数が多い方が強いと思っています。何度も足を運び、世間話を重ねるうちに、人間関係ができます。
今日はパチンコでいくら負けたとか、競馬がどうだったとか、商品の話をほとんどせずに帰る日もありました。ただ、そうして信頼関係をつくった後に商品を提案すると、話を聞いていただけます。最初から商売だけを前面に出しても、お客様には見抜かれてしまいますから。
【アクトパス原田】
新しい温浴施設ができたと聞くと、実際に入りに行くそうですね。
【ニシカワヤ岡崎さん】
はい。お客様から「ここに新しい施設ができた」と聞いたら、できるだけ早く入りに行きます。その後、「早速行ってきました」と連絡すると、皆さん喜んでくださいます。
施設へ入りに行くことも、私にとっては営業の一環です。いまではお風呂に入ることも仕事も、生活の一部になっています。
* * *
「化粧品なら軽そう」「営業はやりたくない」――。そんな入口から始まった、岡崎さんの34年間。
重い荷物を階段で運び、施設のオープンではスタッフと一緒に朝まで働き、何度もお客様のもとへ足を運ぶ。その積み重ねが、商品知識だけでは得られない現場感覚と信頼関係を育ててきました。
ニシカワヤが、施設の困りごとを的確に捉え、数多くの商品へとつなげてきた背景には、こうした「配達から始まる営業」の文化があるのだと思います。
次回は、現場から寄せられた声を、どのように商品へ変えてきたのか。ニシカワヤが生み出してきたオリジナル商品の開発秘話をご紹介します。
(ハラダ)
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