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温浴ビジネスと入湯税
温浴施設の経営戦略を議論する局面において、「入湯税」の存在がクローズアップされることがしばしばあります。
例えば、新規に温浴施設を開業しようと考えている時、温泉を新たに掘削すべきか否か、という話です。
日本人は温泉大好きですから、看板に「天然温泉」という四文字が加わるかどうかで、施設の人気度に大きな影響があります。また2024年に過去最高を記録している訪日外国人観光客においても、世界に冠たる温泉大国である日本で「ONSEN」を体験してみたいと思っている人が概ね4割もいるのです。
看板だけでなく、天然温泉には様々な湯治効果がありますので、入浴の満足度やリピート率にも影響してきます。さらに高温の源泉があれば、水光熱費を大幅に抑制できる可能性もあります(湯量や給排水環境も影響する)。
温浴ビジネスをやる以上は、「天然温泉を提供したい」という考えが浮かぶのは当然のことでしょう。お風呂好きであればなおさらです。
ところが、物事はそう単純ではありません。掘削には億単位の資金が必要になることもありますし、その結果どんな温泉が湧出するのか、掘ってみないと正確には分からず、残念ながら失敗という結果に終わることもあるのです。
掘削の賭けに勝利して温泉が湧出しても、排水先が下水道のみで料金がかかる地域であれば、豊富な湯量をそのまま排水するとコストがかかり過ぎて採算が取れないかも知れません。(余談ですが、結果として膨大な自然エネルギーが活用されないままに地下に眠っています。これは水道法や水質汚濁防止法の運用の問題です。)
そして、最後に立ちはだかるラスボス的存在が入湯税です。
温泉入浴に対する入湯税の規定内容は自治体の条例によって異なりますが、大人ひとりの温泉入浴者に対して150円が課税されるというのが標準的です。
客単価が高めの宿泊施設にとっての150円は、そこまで大きな影響とはならないのですが、安価に多数の温泉入浴者を受け入れる日帰り温泉施設にとっては重大な影響があります。入浴料が千円を下回る施設もたくさんありますので、同じ150円でも大きなダメージとなってしまうのです。
そこで、地域によっては、安価な日帰り施設に対しては入湯税の軽減措置があったりすることもあるのですが、この規定が市町村によってまちまちなのです。
仮に、よくある月間客数1万人くらいの中規模温浴施設だったら、入湯税の納税額は大人比率9割として@150円なら年間1620万円、@50円なら年間540万円となりますから、@150円の地域では日々コツコツと積み上げた薄利がすべて持って行かれてしまう、というくらいのインパクトがあるのです。
ですので、その地域の入湯税が日帰り施設も一律@150円だったら、「この場所では、掘削はやめておいた方が良いでしょう」「天然温泉の看板は我慢して、そのぶん別の魅力で勝負しましょう」ということになります。
法律ですので文句を言っても仕方ないことですが、市町村によってバラバラな入湯税の規定によって、正常な経営判断が歪められてしまうことがあると感じています。
これは、掘削するかしないかの判断だけではありません。
例えば「入浴料○○円未満の施設においては、入湯税の課税を免除する」という規定もよく見かけます。前述の安価な日帰り施設に配慮していただいている条例なのですが、この線引きが昭和時代の旧自治省通達に基づいて1,000円未満となっていることが多いのです。
今どきは入館料1,000円を超える料金設定にしているスーパー銭湯も増えてきましたが、この規定があると、「入浴料は課税されないギリギリの線に設定しましょう」とか、「課税免除の基準を超えるなら、かなり高くしないと税負担の割合が重くて採算がとれません」といった話になっていきます。これも正常な経営判断が歪められている例です。
本来価格設定とは、提供する商品やサービスの価値と需要とのバランスから考えるべき高度なマーケティング戦略であり、課税回避から料金設定を考えるというのは健全とは言えませんが、あまりにも負担が大きいので考えざるを得ないのです。
手頃な統計データがないので、分かりやすく数字で示すことができないのですが、入湯税の規定が温浴施設にとって特に不利な条件となっている地域では、人口に対する天然温泉の温浴施設数が少ないということであったり、その経営状態が芳しくないといった影響が出ているのではないでしょうか。
地域で温浴施設が増えて健全に発展すれば、利用者に健康増進と明日への活力をもたらし、多くの雇用を生み出し、地域の各産業に経済効果が波及し、観光集客にもつながります。
その温浴ビジネスの正常な経営判断を歪め、健全な発展を妨げるような税制になっているとしたら、これは見直していかなければならないはずです。
温浴ビジネス関係者の皆さまはぜひ業界団体を通じて声を届けられる状態になっていただきたいですし、法改正に携わる立場の皆さまには、ぜひこの問題を真剣に考えていただきたいと願っています。
(望月 義尚)
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温浴施設でペット同伴可能なサービスはまだ珍しいですが、拡大するペット市場を考えると、新たなビジネスチャンスになる可能性があります。ペットと一緒のお客様を受け入れるには一定の制約もありますが、専用客室の設置や周辺環境の整備など、工夫次第で他にはない価値を提供できるかもしれません。
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