
昔の銭湯は、男女の浴室と脱衣室を両方見渡せる位置に番台があって、入浴料金や販売品等のやりとりをする設計が普通でした。
番台に座るのは女性のことも男性のこともあるわけですが、そこで異性のスタッフに見られることを問題にする人はほとんどいなかったと思います。
それが、館内アンケートやネットの口コミなどで男性の脱衣室や浴室に女性スタッフが立ち入ることに対する苦情が目立ち始めたのは、この10年くらいのことでしょうか。
男女の問題で言うと、昨今のセクハラやLGBTQといったことにも共通する部分がありますが、社会通念は時代と共に移り変わるものであり、かつての普通が普通でなくなったり、常識が常識でなくなることは多々あります。
事業者がその変化に追従し、いつか運用や設備を変更する日がくることは避けられないのかも知れません。
ただし、温浴施設の運営現場では、男だ女だと言っていられないことがあります。
メルマガ第1690号「リスクを知る」(2021年11月8日配信)に書いたのですが、かつて韓国の温浴施設で火災事故が起きました。その部分を引用しますと、
──2017年に韓国の堤川スポーツセンターで起きた火災では、29人が死亡、36人が負傷するという大きな被害がありましたが、亡くなった方のうち20人は女性のサウナ利用者でした。
火災発生を知った建物の男性オーナーは、男湯やジムの利用客には直接避難を呼び掛けたのですが、女湯には駆け込まず、外から叫んだだけだったのです。
また、建物には女性スタッフもいたのですが、この女性スタッフは火災を知ると避難を呼び掛けることなく先に脱出してしまったそうです。これらの行為により、女性のサウナ利用者は外から叫んだ男性オーナーの呼びかけが聞こえずに逃げ遅れた可能性があると指摘されています。
本当の非常時には男湯だ女湯だとは言っていられませんし、男性スタッフであっても構わずバスタオルを持って浴室へ行き、緊急避難を呼びかけるべきでした。
入浴中の利用者、特に女性は逃げるのに手間取ること、サウナ室内からは外部の音が聞こえにくいこと、そして男性スタッフでも緊急時は女性浴室に入らなければならない場合があるといったことについて、想定していなかったことが被害を拡大してしまったと言えるでしょう。リスクを知っていれば、防げた被害だったかもしれません。──
というようなことです。当時この事件をメルマガ記事に取り上げた趣旨は、新興のサウナ施設が急増する中、温浴施設特有のリスクを知らないまま開業するケースが増えているのを懸念するということだったのですが、それは単に「サウナが火災の原因に」というような話だけではないのです。
温浴施設では、お客様が裸という完全に無防備な状態になって入浴しているわけで、それは「衣服に守られていないので怪我しやすい」「温度差刺激で体調不良になりやすい」「感染症」「緊急時に避難しにくい」といった様々なリスクを伴っています。
温浴施設とは…
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