難しいと言うのは簡単

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あれから14年も経っているのかと思うと、時の過ぎる早さに驚きますが、今年も3月11日になりました。

地震と津波で道路もライフラインも寸断し、東北の被災地では避難所に入れず入浴もできずに凍えている人たちが多数いるという報道を見て、温浴ビジネスに携わるひとりとして、何とかしなければという強い思いに駆られました。

この緊急事態に対して、自分が持っている「温浴」というリソースで何か支援しなければならない。どうすれば。

そこでシンプルに思いついたのがドラム缶風呂でした。

よくキャンプ場でやっているようなドラム缶風呂だったら、大掛かりな設備は不要ですし、水と燃料とドラム缶さえあれば何とか入浴することができる。そうだ、ドラム缶風呂を東北に届けよう！そう思い立ちました。

しかし、たったそれだけのことでも、実際にやろうとすると、多くの困難が立ちはだかります。

被災地まで車でたどりつけるのか？
トラックはレンタカーで借りるとして、ドラム缶はどこで売っているのだろう？
ドラム缶の蓋はどうやって取り除くのだろう？
現地で水や燃料は調達できるのだろうか？
ドラム缶風呂を必要としている被災地とどうやれば連絡がとれるのだろう？
お金はどれくらいかかるんだろう？

分からないことだらけでした。余裕のある平常時にじっくり取り組めば大した問題ではないことも、緊急事態の中で急いで進めようとするとすべてが困難でした。

会社の仲間と手分けして解決方法を探したのですが、「難しい」「ダメだった」という報告ばかりでなかなか期待する答えに辿り着くことができません。普通だったら「そうだよね、やっぱり無理だよね」と諦めているところだったかも知れませんが、被災地の人たちはもっと困っていると思うと、簡単に断念することはできません。

試行錯誤しながらひとつひとつ問題をクリアして、ようやく被災地にドラム缶を届けることができたのは、3月11日から2週間後のことでした。

当時のブログにそのプロセスを書き残しておりますので、よかったらご覧ください。
https://spa-net.cocolog-nifty.com/aqutpas_blog/2011/03/post-d404.html

この経験を通じて知ったのは、「目標を決めて強い意志でそこに向かうなら、大概の困難は突破できる」ということです。このことは、逆に「困難を突破できないのは、目標がはっきり見えていないか、そこに向かう意志が足りないから」と言い換えることができます。

温浴施設のコンサルティングをしている場面で、時折私は突拍子もないことを言い出すことがあります。前例のないサービスであったり、売られていないモノを作っちゃいましょうよ、ということであったり。

たぶん思いつきで無責任なことを言うコンサルタントと思われているだろうな、と感じる時もありますが、そういうことではないのです。私が言っていることは、目標に近づくためのアイデアのひとつであって、本当に不可能なら、また別の方法を考えれば良いと思って言っています。

重要なのはどうやったら目標に近づけるかであって、そのための本気の議論が必要なのですが、そうならずに「難しい」で終わってしまうことがほとんどです。

「難しい」と否定して、それで話を終わらせるのは簡単です。そこには苦労もリスクも何ひとつ発生しません。

逆に、難しくない話というのは、実現までのプロセスが見えていて、リスクよりリターンが上回っていて、投資も短期回収できる見込みがあるということでしょうか。そんな話があればもう皆がやっているでしょうから、やるのが当たり前です。それをまだやっていないとしたら、実行力がなさすぎるか、単なる勉強不足です。

さらに言えば、みんながやっていることをやっているだけでは他との差はつかないのです。

非常識で突拍子もない話は、普通にやっているだけでは到達できないような大きな目標に向かうべき時だからこそしているのですから、難しいのは当然です。それを難しいで終わらせてしまえば…

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