最終処分場の残余年数推移

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今日は 2022年3月23日です。

温浴施設は持続可能-3

 20世紀が終わろうとしている頃、コンサルタント会社の中堅社員となった私は、器用にどんな仕事でもこなすシンクタンクの研究者的なスタイルで行くのか、それとも温浴ビジネスに特化した専門コンサルタントになるのか、まだ揺れ動いていた時期でした。

その頃、社団法人全国防水工事業協会というニッチな業界団体さんから「産業廃棄物処理問題に関するビジョン策定」というプロジェクトを請け負うことになりました。そんなご相談が次々舞い込んでくるのが総合研究所という職場なのです。

──現在、地球環境問題は日に日に深刻さを増しており、企業活動における環境対策は極めて緊急かつ重要なテーマである。

しかしながら、建設工事業において産業廃棄物処理問題は、工事の受注・設計段階から、使用する資材、現場の工法や廃棄物減量・分別への取組み、処理業者への発注システム、リサイクルシステム、最終処分場など多岐にわたる要因が複合的にからんでおり、早期問題解決が困難な状況となっている。

これらの問題に取り組んでいくためには、長期的・総合的視点に立ったビジョンが必要不可欠である。──

こんな書き出しから始まる企画書を提出し、めでたく受注して、部下の竹内君(現峩々温泉社長)と調査をスタートしました。

防水工事業はゼネコンの下請け工事となる場合が多く、廃棄物処理方針に関しての主導権を持っていませんので、問題解決の方法を簡単に見出すことはできません。しかし、当時最終処分場が一杯になるまでの残余年数はあと12年分しか残っていないと言われており、手をこまねいている場合ではなかったのです。

ちなみに、現時点での最終処分場の残余年数は20年くらいと言われています。逼迫していたはずの残余年数が、なぜか当時より増えているのです。

これは環境省がオオカミ少年というわけではありませんし、狭い日本の国土ですから新たな最終処分場がどんどん作られているということもありません。最終処分場の残余年数の増加は、廃棄物の減少に拠るところが大きいようです。減量処理、リサイクルなどによって埋め立て処分する廃棄物の量が減っているのです。

建設業界の皆様の技術と努力の結果と言えます。素晴らしいことです。

しかし、ビジョン策定のために調査をしていた時は、そんな明るい将来展望は見えませんでした。関係者にヒアリングすると、返ってくる答えは一様に「環境問題が大切なのは分かるけど、そのために今以上コストは負担できない。」という葛藤でした。

どんな大義名分や崇高な理念であっても、日々の糧を得ることのためには後回しにせざるを得ない。まずはみんな生きるのに必死なのだ…ということを感じさせられました。

 もし自分さえよければ他人のことや環境などどうでも良い、という人たちしかいなかったら、今の日本は不法投棄のゴミで溢れかえって住めなくなっていたかもしれません。生きるのに必死だからこそ、生きる環境を維持するためにも知恵を出し、汗を流す。それができるのも人間社会だということなのです。

事業活動で儲けを生み出し、その余力で環境対策をしたり、社会貢献活動に寄付すれば良いということではなく…