近年、「リカバリー」という言葉を目にする機会が増えました。
疲労回復やコンディションを整えるという文脈で使われるこのワードですが、Googleトレンドで検索ボリュームを確認すると、過去5年間で5倍近くの伸びを見せています。
私のスマートフォンにも最近よく表示されるのが、リカバリーウェア「BAKUNE」のプロモーションです。
累計販売数は100万セットを超え、開発・販売元であるTENTIALの2025年売上高は128億円、翌期には330億円規模を見込むなど、急成長を続けています。
決して安価とは言えない商品ですが、多くの人が疲労回復や睡眠の質改善、翌日に疲れを残さないという価値に魅力を感じ、新たなマーケットが生まれているわけです。
このマーケットを支えているのは、20~30代の若い世代。仕事や運動、趣味を充実させたいからこそ、日頃から身体のコンディションを整えたいというニーズが広がっています。
「疲れたら休む」ではなく、「積極的に回復する」という考え方が、ライフスタイルの一部になりつつあるのです。
日本リカバリー協会が、20歳以上を対象に行った調査『リカバリー(休養・抗疲労)行動トレンド2025』における、日本人が日常的に行っている休養・抗疲労行動のランキング上位は以下の通り。
第1位:入浴する (43.7%)
第2位:寝る (40.0%)
第3位:コーヒーを飲む (35.7%)
第4位:YouTubeなどの無料動画を見る (32.4%)
第5位:テレビを見る (32.3%)
これらは家庭を中心とした行動ですが、特筆すべきは「入浴」がトップである点です。
これまで温浴施設の訴求は、「リラックス」や「リフレッシュ」が中心でした。しかし、リカバリー市場の広がりを考えると、「身体を整える場所」という価値を前面に打ち出すことは、新たな顧客層へのアプローチにつながる可能性があります。
例えば、施設利用をリカバリー・ルーティンとして提案してみてはいかがでしょうか。
・炭酸泉で身体を温め、リラックスした状態でサウナへ入る
・サウナで温熱刺激を受ける
・水風呂で身体をクールダウンする
・内気浴・外気浴でゆっくり心身を落ち着かせる
やっていることはいつもの温浴・サウナ浴そのものですが、
この体験価値の伝え方を、「ととのい」から「リカバリー」へと置き換えるわけです。
この切り口は、従来のサウナファンだけではなく、スポーツジム利用者やランナー、デスクワーク中心のビジネスパーソンなど、身体のコンディション維持を重視する層との相性も良いでしょう。
さらに、この価値観は「たまの気分転換」ではなく、「日常的なコンディショニング」という利用動機につながります。
利用頻度の向上が期待できるだけでなく、短時間利用プランや月額会員、プロテインや機能性ドリンクなどの飲食メニュー、リカバリーウェアのレンタル、酸素カプセルなど、新たなサービス展開も考えられます。
リカバリーという言葉は、もはや一時的な流行ではありません。疲れを翌日に持ち越さず、毎日をより良いコンディションで過ごしたいという生活者の価値観の変化から生まれたものです。
(※Googleトレンドでは、2025年4月以降「リカバリー」が「リラックス」「リフレッシュ」双方を上回り、2026年2月以降は「リラックス」「リフレッシュ」の合算をも上回っています。)
まずは、既存設備の見せ方や伝え方を少し変えてみることで、施設で何が体験できるのかを発信してみてはいかがでしょう?
サウナメッツァ 大井町トラックスでは、「都市型リカバリースパ」というコンセプトを掲げ、館内着のポンチョはTENTIAL製。今後、「リカバリー」を軸にした施設づくりや情報発信が、温浴業界でも広がっていくかもしれません。
(渡部卓也)
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