インフラとしての存在と採算性の両立を図り健全な経営の継続を目指しましょう
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新型コロナウイルスの影響は、公共施設のみならず、民間の温浴施設にも大きなダメージを与えています。生き残りをかけて必死の努力を図りつつも、閉館・廃業を余儀なくされた施設も増えています。
高齢化が進む中、温浴施設は、浴室の清掃や支度が大変な方、一人での入浴に不安がある方などの生活インフラとしての役割も大きくなってきています。こと公共の温浴施設においては、地域住民の皆様のこうしたニーズに応えることが、大きな存在意義のひとつとなるものと考えます。採算性を高め、施設経営を続けることが地域への最大の貢献となるのではないでしょうか。
私共は、25年にわたり、温浴業界専門のコンサルティングを行ってまいりました。過去を振り返っても、今はとりわけ厳しい経済状況の中にあります。
そんな中で、ひとつでも多くの公共温浴施設が健全な形で営業を続けられるよう、無料の経営相談を承ることといたしました。
新型コロナウイルス対策を鑑み、オンラインにて実施いたします。どうぞお気軽にご活用下さいませ。
株式会社アクトパス 代表取締役社長
望月義尚
-関連コラム(日刊アクトパスNEWS記事より)-
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今日は 2019年2月2日です。
◆公共温浴施設のこれから
年度末ということもあって、ある公共温浴施設の経営改善のお手伝いをしています。
かつてふるさと創生資金から温泉掘削、そして市町村ごとに張り合うように第三セクター方式で公共温浴施設を持った結果、いずこも経営がうまくいかずに四苦八苦という時代がありました。その後市町村合併があったり、指定管理者制度ができたりと時代は移り変わっています。
そして多くの施設が築20年以上経って建物設備の劣化が進み大規模修繕が必要な時期ですし、かつて一自治体一施設だった時は地域の宝だったはずの温泉が、市町村合併でひとつの自治体が複数の施設を抱えるようになると経営不振なところから順番に厄介者扱い。
どうにもならなくなると、指定管理者どころか地域の自治会に無償貸与したり払い下げといった公的財産の放棄とも言われかねないような事も行われています。
昔よりもさらに厳しい状況になっていると感じます。
ふと、誰か良い解決策を生み出しているんじゃないかと、「公共温浴施設」というキーワードでネット検索してみたところ、自分が2001年に月刊レジャー産業に寄稿した記事が出てきました。
http://spa-net.cocolog-nifty.com/aqutpas_blog/files/200101.pdf
18年前の文章を懐かしく思いながら読み返してみて感じたのは「あんまり変わってないなぁ」ということです。議会、首長、役所、社長、地域住民、お客さま…それぞれから好き勝手なことを言われ、相変わらず現場はどこを向いていいのか分からず、実行力が発揮できない状況が続いているところが多いのではないでしょうか。
しかし、温浴ビジネスを取り巻く経営環境は確実に変わっています。高齢化や様々な現代病からの健康増進ニーズは一層強くなっていますし、地域コミュニティの希薄化、観光立国とインバウンドなど、かつて温浴施設が担うべき役割と言われていた健康、交流、観光需要は18年前よりもハッキリとした形を見せており、それに対応するノウハウも格段に進歩しているのです。
「どこへ向かうべきなのか」という意思さえ明確に持てば、その後のソリューションはいくらでも用意されているとも言えるでしょう。
とりあえず誰も文句のつけようがない「省エネで赤字を解消する話」などをしながら、どうやれば皆が納得して同じ方向を向くのか、今回の仕事はそこが勝負どころと思って間合いを探っているところです。
(望月)
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今日は 2019年2月13日です。
◆文句のつけようがない話から
少し前に、経営方針が一本化しにくい温浴施設のことを書きましたが、文末に──とりあえず誰も文句のつけようがない「省エネで赤字を解消する話」などをしながら、どうやれば皆が納得して同じ方向を向くのか、今回の仕事はそこが勝負どころと思って間合いを探っているところです。──と結びました。
その施設は前年度に営業赤字が出ていて、今期はさらに下がっていますので、このままでは事業の存続が危ぶまれるという状況です。
温浴施設として魅力がないわけではなく、泉質と温度に恵まれた源泉をかけ流しで提供していますし、建物もまだまだしっかりしていますので、やりようはいろいろあるはずなのですが、公共温浴施設の宿命で悩みが深いのです。
そこで省エネの話からはじめたのですが、省エネといっても難しい技術や設備投資が大きい話ではありません。
まず、すでによくある節水型のシャワーヘッドがついていたのですが、「節水能力とシャワー使用感はシャワーヘッドによっていろいろあり、相性もありますから実際に確かめてみてください。」と言って、弊社の実験用シャワーヘッドを貸し出しました。現場で試してみたところ節水効果は25%くらいあって使用感も問題ないようです。シャワーの湯は井水を昇温して使っており、下水道整備区域外ですから、節水しても水道料金には変化がないのですが、シャワー用の湯をつくる燃料代は25%削減できることになります。
次に浴槽保温の話。2つある源泉かけ流し浴槽のうちのひとつは、除鉄濾過した源泉を入れています。営業終了後に湯を抜いて清掃し、そして夜間に湯張りをするのですが、50度以上ある源泉を除鉄濾過するプロセスで供給温度が40度くらいに下がってしまうため、朝のオープン前に昇温のために高温の湯を加水するというシステムになっていました。湯張り中の浴槽に保温シートをかければ朝の昇温のための燃料代は不要になるはずと考え、これも保温シートのサンプルで実験してもらったところ、やはり期待以上の効果が確認できました。
この簡単な2つの方法でかなりの燃料代が浮き、前年度程度の営業赤字は解消できる計算です。
しかし、今年はさらに売上がダウンしていますので、まだ充分ではありません。そこで、次はむき出しになっている除鉄濾過装置の保温を提案するつもりです。保温材を巻く方法もありますが、断熱塗料の方が確実性が高そうです。これがうまくいくと営業中の浴槽の温度維持も燃料を使わずに源泉の温度だけで行けるようになります。
そしていよいよマーケティング戦略や館内改善の話になるのですが、当面の赤字や資金ショートが回避できることがわかっていますので、落ち着いて今後の方向性を議論することができるのではないかと思っています。
集客や客単価アップの話は、どうしても不確実性がありますし、現場がその気になって動いてくれなければいつまで経っても成果が出ません。その点、省エネは先に効果が計算できますので、信頼関係構築のためにも省エネの話から始めるのが良いようです。
(望月)
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今日は 2019年3月15日です。
◆にわかヘビーユーザーマーケット
昨日調査で訪れた第三セクター運営の温浴施設で、「サウナ飯」という言葉こそ使っていませんが、明らかにそれを意識していると思われるメニューがありました。
ひとつは生ビールセット。プレートに「いかしゅうまい、フランクフルト、鳥唐揚げ、ポテトサラダ、お新香」が盛り合わせになって1,150円。これでビールは2〜3杯おかわりできそうです。
もうひとつはミックスフライ750円。これもプレートに「エビフライ、イカリング、カキフライ、白身魚のフライ」が盛り合わせになっています。間違いなくビールによく合います。
サウナ飯って何?ということは以前メルマガ第405号( 2017年6月9日執筆)で書いたのですが、要するに風呂あがりに美味しいメニューのことを示すヘビーユーザー用語です。ビールに合う食事だと思っていただいて間違いありません。
地方の公共温浴施設にも、サウナブームの波が届いているのです。
先日ご紹介したCORONA WINTER SAUNAでは、もっとハッキリと「サウナ飯」という言葉を打ち出し、POPにも使っていました。どんなメニューかは以下のリンク先をご覧ください。
http://sauna.s-cage.com/news/0201/
ブームが起きると、急激に参加人口が増えます。その新規参入者たちは「いかに自分が通であるか」を主張したい心理があるようです。なので、共通言語を使ってヘビーユーザー扱いしてあげると満足するのです。
「にわか」「ヘビーユーザー」というのは矛盾している変な言葉ですが、実際にそのような人が今急激に増えていますし、しばらくすると本当のヘビーユーザーになっていくでしょう。
一過性のブームかも知れないからこの先は分からないぞ?とは思わない方がいいです。なぜなら、一度サウナの魅力が分かると、その習慣性は非常に強いからです。
今いろいろな施設に行って勉強中の若いにわかヘビーユーザーたちに「自分のホームサウナはここ!」と思ってもらえれば、この先ずっといいお客さまになってくれます。
そのためには、サウナ→水風呂→外気浴の品質はもちろん、サウナ飯の充実についても早急に対策を講じるべきでしょう。
(望月)
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今日は 2020年1月6日です。
新しい年となりました。この冬休みや曜日の並びが良く集客ピークになりやすい日が続きましたが、お正月の営業はいかがでしたか。
休み中に連絡をとった施設では、いずこも昨年より客数売上とも良いとのことでした。「正月の営業は一年を占う」と申しますが、好調のところはその勢いに乗って行けば良いでしょうし、不調のところはどこかで切り替えて仕切り直しをしないと、不調を引きずってしまいかねません。
私はちょっと風邪気味で体調不良な正月を過ごしました。これも一年を占う意味では意味があることと思いますので、体調管理の見直しをしなければと思っています。
◆2020年温浴ビジネス展望
昨年くらいから、弊社への公共温浴施設に関するご相談が急増していることが気になっています。
一般的に行政の仕事は地元(県内)企業優先であり、さらに公共温浴施設では前例主義、ハード先行、そして横並び意識が強いので、弊社が言うような尖ったマーケティング戦略や先鋭的な運営方法はなかなか馴染まず、基本的にあまりお呼びがかからないものなのですが、ちょっと風向きが変わっているようです。
それはありがたいことなのですが、それだけ困った公共温浴施設が増えているということでもあります。
90年代の公共温浴施設開発ラッシュから20年以上が経過し、施設の大規模修繕や大型設備の更新時期がきているものの、今後の業績の行方を考えると簡単に追加投資もできない…各地でそんな状況が増えているのでしょう。
公共温浴施設は、地域住民の人気という意味では手堅い政策であり、ふるさと創生をはじめとする各種補助金等もあって、市場性や運営の難易度を考慮せずに安易に作られてしまったところがあります。
結果的にお荷物になってしまった公共温浴施設をどうしていくのか、これまで前向きな答えを出せないまま、ずるずると時間だけが過ぎてしまっているようにも感じます。
しかし、銭湯とその他公衆浴場合わせて全国に約2万件ある温浴施設のうち、およそ2割の4千件が公共温浴施設ですから、その動向は温浴マーケットに対して大きな影響力を持っています。公共温浴施設の将来にどう答えを出すのか、それは今後数年間の温浴市場動向を考える上で重大な影響力を持った要素となってきそうです。
昨今の注目のキーワードといえば、「インバウンド対応」「入れ墨タトゥー問題」「キャッシュレス決済」「サウナブーム」「サブスクリプション」「パーソナライズ」「ミクストラン」…といったことですが、これらが注目されているというのは、ある意味平穏な状態であり、前向きな未来に向けた進化とも言えるでしょう。
過去の歴史を振り返ると、本当にマーケットが激変してしまうのは、ネガティブな事件がきっかけであったことも少なくありません。
そうならないように、安全衛生と危機管理には細心の注意を払いつつ、温浴マーケットの健全な拡大に勤しむ一年にしたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
(望月)
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今日は 2020年3月24日です。
◆収益が最大になる入館料はいくら?
いまある公共温浴施設で経営診断プロジェクトが進行中なのですが、担当の方から「入館料金をいくらにすれば収益が最大化するのか?」というご質問をいただきました。
公共温浴施設は料金設定ひとつとっても自由にならず、いろいろと制約がありますので、料金の見直しをするための説得力のある理屈を探しているということなのでしょう。
先に申し上げておきますが、価格を上げれば客数が減り、価格を下げれば客数が増える。売上はマーケットに対して自店がどれだけの価値を提供できるかで決まるものであり、入館料金設定をいじっただけでは客数と客単価はシーソーのような関係になるため、入館売上が大きく変わるものではないということを前提条件とします。
商圏の広がりとか固定客化とか言い出すとややこしくなるので考えないことにします。
その上で入館料変更を検討するとすれば、いくつかのアプローチから考える必要があります。
ひとつは予算帯の話です。以前メルマガ第1174号「1,000円と3,000円の壁(2)」で書きましたが、消費者心理には予算という感覚があります。
温浴施設の入館料においては300円、500円、1,000円、2,000円、3,000円という予算帯があり、それぞれ400円、800円、1,800円、2,700円が分岐点です。この中のどの予算帯に自店は位置しているのでしょうか。
仮に500円だとして、予算帯理論から言えば、400円の分岐点を超えてしまえば、650円とか720円といった微妙な価格設定は皆同じ500円ゾーンに含まれているのですから、できることならその範囲内でできるだけ高く790円(税込)と設定したいところです。
入館料400円以上800円未満という価格帯は、簡単に言うと「銭湯とは一線を画す魅力を持った施設で、かつ館内着やタオルをつけない場合」という意味を持っています。最近は銭湯料金が400円を超える地域が多いですが、その場合の分岐点は400円でなく銭湯価格を基準に考えた方が良いようです。
790円に設定して、あとは少しでも多くの集客努力をする。これが予算帯をベースにした考え方になります。
ただし、それぞれの地域には競合店という存在や、その地域の相場感というものがあります。そのバランスを大きく逸脱する設定になってしまうと、いくら予算帯とは言え、理解されない可能性があります。
例えば、立派なハードの公共温浴施設も含めて皆が横並びで入館料500円がほとんどという地域であれば、いきなり790円としたら、一目で「高い!」と言われてしまうわけです。
人が違いをはっきり認識する差は1.3倍以上と言われています。つまり500円×1.3=650円以上の入館料をいただくためには、何か納得できる理由が必要になるのです。その理由が特になければ、1.3倍以内に収めておく必要があります。そうでないと「あの施設は不当に高い」という評価を下されてしまう可能性があります。
逆に自店よりも高い価格を設定している競合施設があるなら、その1.3倍の差(76.9%)の中に収めるのか、そこを抜け出すべきなのかを考える必要があります。例えば790円の競合施設を相手にして自店の割安感を訴求したいなら、790円÷1.3=608円を切る価格設定にすることで違いが際立ってきます。
ここまでがマーケティングの話です。
さて、一般に入館料が高い施設であれば、それにふさわしいグレード感やサービスレベルが求められます。つまり消耗品費や人件費は入館料設定によってかかり方が変わってきます。特に館内着やタオルを提供するかしないかは大きな違いとなってくるのです。マインド的に手厚い接遇に向いているかどうかも重要です。これらはマネジメントの話。
さらに、もうひとつ考えなければならないのはハードの話、施設の稼働状況です。
温浴施設には設計上のキャパシティ(最大収容人数)があります。年に何度かあるピーク日(お正月など)には多少の入館待ち(入場制限)が発生するくらいが最も効率的に施設を運用できている状態であり、それを大きく超える集客はできませんし、大きく下回っても良くありません。
低稼働な状態は施設を持て余しており、維持管理費などの無駄な固定費が経営を圧迫することになります。適正な稼働状態を維持することが大切であり、この点では価格が高ければ高ければ高いほど良いというわけではないのです。
このように、入館料の変更は非常に複雑な話になってしまうのですが、頭を整理するために、ここに書いたようなことをできるだけ単純にして、500円から1,800円まで入館料を段階的に上げて行った時の損益シミュレーションをやってみました。
入館料500円、年間客数10万人という仮想温浴施設を基準にして、入館料と客数はシーソーであるという前提です。
すると、興味深い結果が出ました。入館料を高くすると、営業利益率、額ともに良くなるのです。リネン提供のない500円ゾーンでは800円が最も儲かるようです。
ただし、1,000円以上で館内着を提供し、消耗品や人件費を多くかける場合は利益が減ります。やはりそれをやるからには商圏の拡大(客数アップ)や付帯部門の伸びが伴わないと厳しいということです。
実際の経営事情はそれぞれ違いますので、このシミュレーション結果をもって「客単価志向が正しく、施設が低稼働でも入館料を高くするのが良い」と結論づけるのは早計ですが、客数ばかり気にして施設がお客さまでいっぱいになっていないと不安になり、割引や値下げに走るという考え方は失敗の元ということです。
いずれにしても、事業形態が複雑で様々な要素が絡む温浴施設は、入館料だけを調整して利益をコントロールできるものではなく、マーケティングとマネジメントとハード、それぞれの分野から総合的に検討して丹念に最適解を探すしかないということを再確認しました。
(望月)
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今日は 2020年7月17日です。
◆答えは現場にしかない
7月22日に始まる観光支援策GoToトラベルキャンペーンから、東京発着の旅行が除外されることになったようです。
日々多くの感染者数が報告されている東京都からの感染拡大を不安視していた人たちにとっては安堵する決定ですが、大都会の消費パワーに期待していた観光業界の人たちにとってはガッカリする部分もあり…というように社会心理としては複雑な心境といったところでしょうか。
いずれにしてもこうした補助や助成金の類は一過性のことであり、事業者側としてはそれで一息つけたとしてもずっと持続するわけではありません。
自力で生き残れる道筋を見出すことの方が重要であり、政府の方針に一喜一憂している場合ではないのです。
コンサルタントという仕事柄、これまで多くの業績不振店を見てきたわけですが、不振の根本的な原因として最も多いのは経営の意思決定が現場と離れたところで行われているケースでしょう。
施設数にして温浴業界の2割を占める公共温浴施設はほとんどがこのパターンです。施設の所有者は行政であり、民間企業への指定管理と言っても様々な制約でがんじがらめになっていて、現場は決められた通りに運営するだけで重要な経営判断にほとんど関与できません。
本社や親会社が温浴以外の事業を本業としている場合も、温浴施設の現場から離れたところで意思決定が行われていることが多く、現場の意見や情報が充分に吸い上げられていないためにトンチンカンな経営判断になってしまうようです。これも温浴業界に非常に多いパターンです。
資金調達において補助金や他人資本の比率が高過ぎるのも同じような問題に陥る原因になります。行政や出資者の現場を知らない素人的な意見がまかり通ってしまったり、実行力が削がれてしまうものです。
逆に社長が自ら現場に立っているような施設は経営判断が柔軟かつ迅速です。
誰もが未体験であり、刻々と状況が変わるこのコロナ禍において、どちらの企業体質が望ましいのかは自明のことでしょう。
つまり、できるだけ現場に近いところで意思決定する経営体制をつくることが、この危機を乗り切るためには極めて重要だということです。
経営体制の変更というと非常に難しいことのようですが、億単位の投資リスクに比べれば、うまくいかなかった時はやり直せるぶん、大胆に変更してみることもできるのではないでしょうか。
(望月)
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今日は 2021年3月4日です。
◆省エネ省コストは長期的重要課題
大きな扱いではないのですが、数日前のニュースで、
──
2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロ実現のため、環境省が排出量に応じて企業に税負担を課す「炭素税」を本格的に導入する方向で検討していることがわかった。(読売新聞2021.03.01)
──
との記事がありました。
炭素税というのは欧州ではすでに本格的に実施されている税制で、化石燃料の使用=二酸化炭素の排出に対して課税するというものです。
日本では「地球温暖化対策のための税」が2012年から導入されていますが、経済界の反発もあって国際的に見るとまだ税率が桁違いに低い状態になっています。
日本の炭素税まだ検討段階ですが、二酸化炭素排出を抑制しなければならないという考え方は世界的な潮流であり、仮に日本の経済界が抵抗したところで抗うことはできません。
菅総理が去年秋の所信表明演説で、2050年にCO2排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指すと表明しましたが、世界的にカーボンニュートラル戦略を遂行していない国家や地域からの輸入品に対しては、懲罰的な輸入炭素税をかけるという方向に進みつつあり、輸出依存度が高い日本の経済構造を考えれば、自主的にCO2排出に規制をかけていくのか、それとも世界の市場から強制的に締め出されるのかという二者択一になってしまうのです。
このような流れの中で、温浴施設のような小さな事業単位にも直接CO2排出規制がかかるようなことになっていくかどうかはまでは分かりませんが、少なくとも電力や燃料のコストには間違いなく響いてくる話でしょう。
「省エネ対策についてはもうできることはやっている」と考えている温浴施設は多いのですが、詳しく聞いてみるとそれは業者に勧められてピーク電力を抑えるデマンドコントローラーや節水コマ、節水シャワーなどを導入したというようなことで、個別の環境に合わせた徹底的な省エネ対策ができているわけではありません。
昨年経営診断をさせていただいた築16年のある公共温浴施設では、高温で湯量豊富な源泉をかけ流しで提供していました。幸い下水道料金もかからない地域で、アルカリ性でつるすべ感のある新鮮な源泉の魅力からそれなりに集客もできていたのですが、経営的は赤字。
損益計算書と営業日報から赤字の原因を紐解いていくと、問題点が大量に見つかりましたが、中でも水光熱費がかなり高いということが分かりました。高温で湯量豊富な源泉がある上に下水道料金がかかなないのであれば、水光熱費はもっと低くなるはずなのですが、人件費と並んで支出の大部分を占めていました。
これはおかしいということで設備を拝見すると、高温の源泉はチラーで適温に冷ましてから浴槽に注いでかけ流し。一方でシャワーは上水道を使い、ボイラーでお湯にして提供しています。機械室で思わず「なんでこんなことに?」と言ってしまいましたが、温浴施設の経験が乏しい設計や設備業者が担当し、施主側にも知識がないと、こんな愚行も珍しいことではないのです。
これは極端な例ですが、チラーとボイラーは大抵の温浴施設に両方とも設置されていますから他人事ではないのです。
多くの温浴施設では大なり小なり、省エネ省コストの余地を抱えているもので、完璧に対策ができている施設の方が少ないと感じています。
コロナ禍をきっかけに、支出の見直しを進めている施設は多いと思いますが、省エネは一時的なコロナ禍対策ではなく、もっと大きな流れとして腰を据えて取り組む必要があります。今のままの設備構造では、将来的なエネルギーコスト増大の流れに対抗できなくなってしまうおそれがあるのです。
いま、温浴施設では1客あたり水光熱費にして300円前後になっているのが普通レベルなのですが、普通では危険だと思ってください。
(望月)
ご相談の流れ
- 経営改善を主なテーマとして、アドバイスをいたします。
- ご希望の方には、うかがった内容を元にコンサルティングのご提案をさせていただきます。
- ご提案例)損益改善診断/リニューアル診断/リニューアル基礎計画/デューデリジェンス
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株式会社アクトパスとは
- 1996年より温浴事業のコンサルタント活動を行っていた代表望月義尚が2006年に独立・創業。
温浴施設コンサルティングのパイオニアとして数多くの施設の支援を行う。
特に、商圏分析を活かした売上予測と経営計画の精度の高さに定評がある。
望月の共著に「温浴施設の再生計画実務資料集(綜合ユニコム)」、「温泉百科事典(丸善出版)」がある。
現在の日本のサウナブームの先駆けとなるロウリュブームの火付け役でもある。
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温浴施設コンサルティング25年の実績
- 公共・民間含め国内外に多数のコンサルティング実績がございます。実際に施設運営にも携わっており、現場の業務内容も熟知した上での生きたコンサルティングが可能です。アクトパスのコンサルティング・プロデュースの実績についてはこちらをご覧ください。
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パートナー企業との連携
- 日本一の温浴施設設計実績を持つ設計会社、省エネルギー・省コストの専門コンサルティング会社等、専門性が高く実績豊富なパートナー企業と連携し、より効率的なご支援をすることが可能です。
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温浴施設経営の情報を日々発信
- 週6回(月~土)温浴施設経営をテーマにした有料メールマガジン「日刊アクトパスNEWS」を発行。
集客・売上アップ・コストダウン・人材マネジメントに至るまで、様々なテーマの最先端事例を発信し続けています。