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温浴施設の売却や購入を円滑に進めるお手伝いをしております
- 温浴施設の閉店廃業、事業再生といった案件が全国的に増えています。
2020年からのコロナ禍によって受けた経営ダメージも要因のひとつです。温浴施設の売買には相場的なものが存在せず、売り手と買い手の双方が納得できる適正価格を見出すためには、「不動産価値」ではなく、「事業価値」を判断する必要があります。アクトパスでは、長年に渡り多くの温浴施設の経営コンサルティングに携わってきた経験に基づき、その温浴施設の事業価値や将来的な可能性を示すことで、温浴施設の売却や購入を円滑に進めるお手伝いをしております。
施設の売却あるいは購入希望の企業様とのネットワークもございますので、売買でお困りの際は、まずはご相談ください。
-関連コラム(日刊アクトパスNEWS記事より)-
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今日は 2021年9月1日です。
◆施設を売却しなければならない局面
残念ながら事業清算となってしまったある温浴施設の売却についてご相談を受けているのですが、温浴施設の売却の際には、通常の不動産売買と異なるいくつかの注意点があります。
最も大きいのは売買価格設定の問題です。「いくらで売れるのか」「いくらなら買う価値があるのか」、売る側と買う側にはそれぞれの思惑がありますが、温浴施設を含む不動産の価格を決めるのは簡単なことではありません。
購入側が事業再開を完全に否定している場合は、ほとんどの場合建物を他の用途に転用することができませんので、解体撤去となります。すると、購入費用や諸経費の他に既存建物の解体撤去費がかかることになるのですが、これが予想以上に巨額なのです。
よく聞くのが坪あたり10万円という目安ですが、条件によっては30万円という話も聞いたことがあります。ほとんどの温浴施設は数百坪、大規模施設になると数千坪というスケールですから、解体撤去費も数千万円から億単位となりかねないのです。
地価が高くない場所であれば土地の価値を解体撤去費が上回ってしまう可能性もあり、そうなると買い手がつきません。
売る側としては、事業再開を目指してくれる買い手を探すしかないと言うことになります。
事業再開を目指す買い手としては、不動産投資会社や温浴事業者などがありますが、事業再開といっても経営破綻した施設ですから、従前のまま単に再稼働しただけでは再び経営難に陥るのは目に見えています。
過去の営業成績だけを見て、そこから利回りを計算しようとすれば、採算が取れないという結論か、二束三文でしか買えないと言ってくるだけでしょう。
少しでも高く売って事業清算の穴を埋めたい売却側としては、初めから利回り計算をしようとするところは良い売却先とはならないのです。
良い売却先とは、事業の可能性を評価してくれるところです。
施設の状態や従前の営業成績から改善可能箇所を見出し、あるいはマーケティング戦略の再構築によってどこまで事業性が期待できるのか、リニューアルコストも含めてしっかり判断できるところであれば、プラスの評価をしてくれる可能性があります。
ただし、それができる相手は簡単には見つからないでしょう。またそれができるくらい賢い相手なら、軽々しく高値で買うとは言わず、買い手がつかないか二束三文でしか売れない状況になるのを冷静に待って、それより少し高く買えるタイミングになるのを確認するはずです。
もうひとつ可能性があるのは海外の投資家です。日本に事業拠点を持ちたい、日本の不動産や温泉に興味ありといった元々の購入意欲がありますので、話が早い可能性があります。これが成立するかどうかは仲介者次第ですが。
このように考えてみると、売り手側の思惑通りに売買を成立させるのは極めて難しいということだと思います。
自力再建の道も含め、様々な可能性を探っていくことになりますので、閉店してからも苦しい戦いが続くでしょう。その間、稼働させない施設や設備はさらに劣化が進み、ダメージが大きくなっていきます。もしも再開することになった時の修繕費を抑えるためにも、設備から水を抜くなどの養生はきちんとやっておく必要があります。
重篤な状態、あるいは事業停止となってからできることは限られてしまいますし、再建の道は険しいものです。つくづく、事業は人と同じで、日頃からの健康管理が大切だということを痛感します。
(望月)
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今日は 2020年11月5日です。
◆最終的には人次第
いま事業者が撤退して長期休館中の温浴施設の経営診断をしています。
休館といっても、最初と二度目の経営を担った会社はいずれも撤退し、売却の末に取得した現在の所有者が営業再開を模索しているところで、息を吹き返せるのかどうかも分からない状態でのご相談。
過去に経営が行き詰った主な原因は、過剰投資とマーケットの縮小でした。
当初そうなった経緯はよく分かりませんが、商圏人口が多くない地域であるにも関わらず、かなり立派な施設を作ってしまい、明らかなオーバースペック。
以前の事業会社2社は重たい減価償却や金利負担に四苦八苦しているところで、競合店が増えて広域商圏が削り取られ、さらに地域の人口も減少してしまい、売上が年々落ち込んで赤字が累積というパターンでしょう。
しかし、現地の施設を実際に拝見し、残っていた休館前の営業データや損益計算書を分析してみたところ、改善余地は多々ありました。
営業再開後に従前と売上が変わらなかったとしても、黒字化は可能ということが分かりました。
さらに、マーケット特性に合わせて効果的なリニューアルを行えば、売上の伸びも期待できますので、ふたたび過剰投資にならないようにさえ気をつければ、事業再生の道筋はハッキリと見えるのです。
今年はコロナ禍もあって、全国的に休廃業に追い込まれる温浴施設が増えています。
しかし、これまでの経験から言うと、実はほとんどの施設が再生可能と考えています。
いま新たに温浴施設を建設しようとすると、坪あたり200万円近い建築コストがかかってしまうことも珍しくありません。
坪200万円の建築コストを10年以内に投資回収しようとすれば、単純に考えて月坪あたり2万円以上のキャッシュフローが必要となります。月坪あたり賃料が2万円以上の店舗物件と言えば、かなり好立地の部類です。新築の温浴施設は事業開始時点でそのレベルの収益性を求められる宿命を背負っているということです。
それと比べると、どんなに築年数が経過した温浴施設であっても、建物がしっかりしている限りは初期投資が半分免除されているようなものですから、再生リニューアルというのは基本的に新築よりも低リスクなのです。
温泉が湧出しているならなおさらです。極端に言うと温泉掘削は1億円の博打ですが、既に源泉があるなら掘削失敗のリスクを心配する必要もありません。
さらに、経営を改善する知恵や工夫は奥が深く、すべて完璧にやりきっている施設などありません。
そう考えると、本当はまだ寿命が尽きているわけではなく、まだ解体しなくても良い施設も多いはずなのです。
ただし、理屈はそうであっても、再生の道筋を信じて、リスクを負ってそこに投資する人がいなければ事業再生は始まりません。実際に再生に取り組む現場では、次々に持ち上がってくる困難から逃げずに立ち向かう人たちが必要です。
つまるところ、どれだけ経営資源やノウハウがあっても、それを活かすために必要なのは「人」です。施設が命運尽きて解体撤去となるかどうか、それは最終的には「人」次第ということなのです。
(望月)
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今日は 2019年6月8日です。
◆滑り止めと運命論
昨日は、再生オープンに向けて動き出したプロジェクトの現場に行きました。
業績不振で前オーナーが撤退、売却となった案件ですが、不振に陥った原因のひとつに浴室床の滑りがあると考えました。
浴室床には平滑な石材が使用されているのですが、これが高アルカリ性の泉質も手伝ってよく滑ったのです。調査で入浴して歩いた時は温浴施設に慣れた私でもちょっと怖いと思いましたし、実際に転倒事故も起きていたようです。
いくら良い泉質で立派な施設でも、危険や不安を感じるような浴室ではリピーターは望めませんし、悪評も立ってしまいがちというものです。
主要な動線上には滑り止めのマットが敷かれていたのですが、全面にマットを敷いているわけではなく、マットから外れたところは滑りますから、付け焼刃的な対策でしかありません。
現場スタッフへのヒアリング調査で、「施設が新しい頃はそれほど滑らなかったのに、だんだん滑るようになった」という事実を聞き出していましたので、滑りの原因は蓄積した汚れやスケールに違いないと思い、徹底的な洗浄をすれば滑りが解消する可能性があると考えたのです。
そこで、浴室安全衛生のプロであるアクアトリートの森田さん(2018年弊社主催「経営品質向上セミナー」講師)にお願いして、調査とリセット洗浄を実施しました。
床材や汚れの性質に合わせたプロ用の洗浄剤を用いて洗浄してもらったところ、清掃後できれいなはずの床から汚れが浮き上がり、床材の石の色が変わるのが分かりました。
洗浄後には床に温泉を撒いて歩いてみたのですが、まったく滑らなくなり、不安感も解消。
プロフェッショナルの仕事に感心すると同時に、迷いは深まりました。
迷いというのは、洗浄とそれ以外の対策のいずれをとるべきかということです。
しっかり洗浄をすれば滑らなくなることは分かったのですが、見た目は従前とほとんど変わらないので、これまで「滑って怖い」と思っていた人たちのマイナスイメージ一気に拭い去ることはできません。そうなると再オープンしてもなかなか客足が戻らないのではないかという懸念があります。
洗浄で十分な滑り止めができなかった場合には、床への滑り止め加工(様々な方法があります)や、費用はかかりますが最終的には完全に滑らないタイルへの全面貼り換え工事まで考えていたのですが、実際にはそこまでやらなくてもいいのかも知れない、しかしイメージが…という葛藤です。
そこで新オーナーとなった社長と打ち合わせしたところ、全面貼り換えで行きましょう、という結論になりました。
理由はイメージの問題だけでなく、洗浄による滑り止め効果がどれだけ持続するのか不明であること、今後の洗浄をプロに委託し続けた場合のランニングコスト、将来的にやっぱり貼り換え工事となった場合の休業リスク(浴室床貼り替え工事は長期休業が必要)なども総合的に考えると、再オープンが多少遅れてもいま貼り換えてこの問題を終わらせてしまった方が良い、という判断です。
普通はここにリニューアル予算が立ちはだかり、判断をさらに難しくするのですが、目先の資金繰りに困っていないからこそできる最善の判断だなぁ、と感じました。
ひとつの問題だけでも答えにはいくつもの選択肢があり、複数の問題がからめば、その結果は無限の可能性が広がります。その中からたったひとつの道を選び取っていくのはまさに経営者自身が持っている運命としか言いようがありません。
コンサルタントにできるのは、可能な限りの選択肢とそれを選んだ場合の結果を予想して、あるはずの最善の運命を閉ざさないこと。それを選ぶのは経営者自身であり、コンサルティング成功率などという概念はおこがましいことだと思うのです。
この現場は当初7月中旬の再オープンを予定していましたが、この浴室床貼り換え工事を含めて、もう少し先に伸びそうです。巨額赤字でしたが、きっと再建はうまくいくのではないかとワクワクしています。
(望月)
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今日は 2019年4月16日です。
◆敗軍の将は兵を語らず
ある売却案件の買収が決定し、事業再生モードに突入しました。
もう閉館してしまい、これまでの運営スタッフは解雇されており、もし再雇用するならこのタイミングで面接に動かないとみんないずれ再就職してしまうので、待ったはききません。
ところが買収を決めた当の社長は本店のリニューアルが大詰めの段階に来ていて、身動きがとれない状況。
そこで「望月さん、面接をお願いします。」ということになってしまいました。私もいろいろなプロジェクトが激しく進行中なので、そんなややこしい仕事は引き受けている場合ではなかったのですが、他に動けそうな人がいなかったので仕方ありません。
現地へ行って、たくさんの元社員ひとりひとりと会うことに。
昨日は5人と面接し、以前の仕事内容などを聞きながら能力と人物を確認しました。
最初の一人目は元支配人。最も全体像を把握している人ですから、時間をかけてじっくり話を聞いたのですが、出てくる言葉は本社や部下への愚痴や不満ばかり。
業績不振で施設売却になったのは自分のせいではないと言いたかったのかも知れませんが、残念な気分になりました。
多方面で問題を抱えていた事業だったから不振に陥ったのは間違いなく、その責任がすべて支配人にあるとは誰も思っていませんが、それを何とか改善できるかも知れない立場にあったのはやはり本社と現場の間に立つ支配人です。
それができなかった以上は自分の失敗として受け止めるべきで、他のせいにしてはいけません。
再雇用でリベンジしたいなら、あらためてこれからやり直したいことやプランを語ってほしかったのですが、そこにはあまり具体的なビジョンがなく、期待を感じさせるものはありませんでした。
この時思い出したのは「敗軍の将は兵を語らず」という言葉。失敗した者は弁解するものではないという意味ですが、結果が出てしまってから何を言っても時すでに遅し。
何かを言い、議論を戦わせることができるのは事業が存続している時だけ。不満や異論があるなら、その時に言って問題を解決していかなければ意味がないのです。
我慢して、不満をため込みながら、周りの変化に期待しているだけで、勝手に良い結果がやってくることはほとんどありません。終わってしまってから愚痴を言っても何もならないのです。
このメルマガを読んでいる温浴施設経営者や支配人、幹部の皆さんにもお伝えしたいのは、「いま、その立場にいる、あなたにしかできないことがある!」ということです。どうか問題を先送りせずに、諦めずに、事業の健全化と永続化に正面から取り組んでください。事業が存続している限り、やれることはまだまだあるはずです。
(望月)
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今日は 2018年8月3日です。
◆温浴テナントリーシング
ときどき、弊社に不動産会社や商業施設デベロッパー、あるいは設計会社から、「温浴施設のテナントをご紹介いただけませんか?」と電話がかかってくることがあります。
やれやれ、またか。と思いながら話をするのですが、いつも話す内容は決まっていて、「ご紹介したいのはやまやまなのですが、かなり難しいですよ」となります。
テナント紹介だけで商売になるならありがたいなのですが、実際にはほとんど温浴施設のテナントリーシングが成約する可能性はありません。
なぜかというと、
(1)出店意欲の旺盛な多店舗展開企業は限られている。そういった企業にとっては出店候補地はいくらでもあるので、お誘いに乗るよりも自分たちの基準で立地選定する方が良い。
(2)一般的な商業施設にとっての好立地と、温浴施設に適した立地条件は必ずしも一致しない。温浴施設にとっては借景や給排水条件なども重要であり、不動産コストが安くて借景や給排水条件が有利な土地は商業地以外であることも多い。
(3)お風呂のついでに買い物や食事をすることはあっても、買い物のついでに入浴する可能性は低い。つまり温浴施設にとっては商業施設との複合出店メリットが少なく、相乗効果に大きな期待はできない。
(4)潤沢な利益を出して地代家賃をしっかり払えるのは繁盛店だけで、ちょっと不振になると固定費の比率が高いので利益率が悪くなる。主要な事業リスクをオーナー側で負担し、運営を委託するだけなら候補企業はたくさん存在しているが、はじめから高額の地代家賃を期待すると難しくなる。
(5)将来テナントが撤退した場合、残った施設を温浴施設以外に転用することは難しい。
こういったことを説明していると、残念ながらほとんどの相手は引っ込んでしまうのです。
本当のことを言っているだけなのですが、なにか業界発展の芽を摘んでしまっているようで、少し気が咎めます。
仮に温浴施設開発がもっと「小規模」「低投資」「水を大量には使わない」ということになると、話はまったく違ってくるだろうと思います。以前の岩盤浴専門店がまさにそうでした。
今後温浴マーケットが再び盛り上がっていくためには、デベロッパー側の都合に合致する業態開発ということも重要でしょう。
(望月)